音系同人はこれから”どうする”のか

2017.05.06 日記

先日はM3おつかれさまでした。私にとってはおそらく最後の即売会。まったりとした感じで初めて参加したM3を思い出す(あの時は勝手も分からずバタバタしてましたが)ほんわかとしたイベントでした。
ミックス本は Gumroad に置いています。内容はディスク版と変わりません。

さて。
これで私から音系同人作家という肩書きが完全に外れるわけですが、ひとりの老害としてちょっと書きたい(けど書くか書くまいか迷っていた)ことがあります。
書くとしても何年か後にこっそり出すか、名前を伏せてどこか誰も読まないようなところにひっそりと……と思っていたのですが、六弦A助さんの こちら の記事を読んで、まぁ表に出しちゃってもいいかなと吹っ切れたので。

六弦A助さんの言う「無理のある空気」、私は停滞感とか閉塞感として感じたのですが。それは、私が音系同人の活動に区切りをつけようと思ったこととも関連しているんじゃないかなぁという気がします。

というわけで、今まで音系同人界隈に居て、そしてつい先日そこから引退した人間という視点から少し辛口に、今の音系同人について書いてみようと思います。

ちなみに現状に対して否定的なので、そういうのが嫌な人はこの先は読まない方が良いと思います。

音系同人のアイデンティティとは何だろうか

即売会でパッケージとして売るよりもWebで公開したほうが多くの人に聴いてもらえた時代から、即売会で形にして売ったほうが多くの人に聴いてもらえる時代を経て……今はどうでしょう?
「即売会で形にして売ったほうが多くの人に聴いてもらえる時代」には間違いなく存在していたものが、今は存在しない。私は今の音系同人に対して、正直に言ってそう思っています。

今からちょうど10年くらい前に、音系同人はある方向転換をしました……というと否定されそうですが。でも、間違いなくその10年くらい前を境に色々な面で大衆化を図った、というのが私の印象。
それまでと比べてキャッチーになりました。クオリティも上がりました。制作も広報も、とてもシステマティックになりました。代償としていくらかのアンダーグラウンド感や、他の音楽市場にはない独特の雰囲気が少しだけ薄れました。

そうすることで一時的に盛り上がった印象はあります。でも、続かなかった。

まぁ、当たり前のことだと思うんです。当時すでに音楽を聴く敷居はすごく下がっていて、世界中の名曲が動画サイトで無料で(違法ですが)聴くことができた。大衆化してメジャーなものになろうとした音系同人は、本当にメジャーなものと正面から対峙しなければならなくなってしまった。

例えば駅から近くて評判も良く、誰もが知る本当に美味しい有名な飲食店。駅から遠い、一部の人に人気のあるそこそこ美味しいマイナーな飲食店。どちらを選びます?
……まぁ、言うまでもないですよね。
それまでは評判が良いわけでもなく、立地も悪い。でも趣味の合う人には本当に美味い有名店以上にリピートしたくなるピーキーな方向性があったわけですが。そこをある程度犠牲にして客層を広げようとした結果、オリジナリティが薄れたことで逆に新規層を獲得できなくなってしまった。飲食店ではよくある話ですね。
今の音系同人も似たような道を進もうとしています。

じゃあ昔に戻ればいいのか、というとそうでもない。
かつては音系同人の個性だったものが、他の市場に持ち込まれて音系同人ならではのものではなくなってしまったものもありますし。そもそも今となってはかつての音系同人を知らない人の方が圧倒的に多数なので、単純に昔のものを再現すればいいという話にはならないでしょう。
だから、新しく音系同人ならではと言えるような魅力をこれから作っていかないといけない、と私は思います。それもまったく新しく用意するものじゃなくて、「昔から音系同人が持っていて今も残っている何か」を基にすることになるんじゃないでしょうか。じゃないと別に、同人じゃなくてもいいじゃんっていう部分は覆らないわけで。

自由な創作を同人のメリットに挙げる方も少なくないですが。ふと視点を変えてみると、自由な創作なんてものは別に同人じゃなくてもできてしまいます。そして、同人という枠に固執しなくても作品を公開する手段は増えてきました。
なので音系同人のアイデンティティが何なのか、それは改めて考えて、ちゃんと音という形で提示できないと……今後、新しい人に音系同人に興味を持ってもらうのは難しいんじゃないでしょうか。

利益追求路線は音系同人をダメにしたのか

儲け主義とか市場主義とか表現されていますが、活動目的がお金になっちゃったケースのことを指しているのだと思います。
私は経済学とか何とか、そういうのには疎いのですが。正直なところ、◯◯主義と冠することができるほどちゃんとビジネスライクにサークル活動できているサークルって皆無なのでは。
中長期的な視点から市場の育成に取り組む、なんて真摯なサークルはほとんどいません。せいぜい仲間内で何かを一緒にやるのが限度で、その枠を超えた何かを成そうとする人はほとんど居ないですよね。

言葉は悪いですが、本当の意味でその行為は「イナゴ」だと私は思っています。そこにある食糧を尽きるまで食い尽くすだけの。
利益を追求しているんじゃなくて、ただ単に尽きるまで消費しているだけ。種籾を植えて来年の実りを待つ、なんて発想はありません。

一番それが顕著だったのは、音系同人におけるライブブームだったような。
勢いよく燃えて、そして一瞬で燃え尽きた感じがしますね……。今振り返ってみると。

話は戻りまして。
これを商売にしたい、と思えるほどの利益を上げられるのはごくごく一部のサークルです。その影(という表現は適切ではありませんが)には数多の「金銭的な理由で活動しなくなるサークル」があるのも事実。作品を作るのにも、イベント参加するのにもお金は掛かりますからね。だから利益を追求するのは悪だ、とはハッキリとは言い切れない。
これは別に音系に限った話ではないですね。

小さなサークルに音系同人の中長期的な展望なんて描けません。だから、それは大きなサークルが「やらないといけないこと」です。たとえそれが実際には大きなサークルを継続して「経営」するためのものであったとしても、結果的には音系同人という「文化」が長く続くことに繋がるので。
……私はそう思っています。

でも、今は「大きなサークル」はごく僅かしかいないみたいですね。

二次創作は進むべき道を少しだけ間違えた

さて、ここからは音系同人の中でも二次創作というジャンルのお話。私にとって非常に身近だったジャンルですね。

私の中でインパクトの大きかった出来事があります。艦隊これくしょん-艦これ-が話題になって、東方畑の人たちがこぞってアレンジCDを出した時のこと。
今だから正直に言いますが、あまり良い内容ではないと感じたものが多かったです。殆どが「アイデアが飽和した東方Projectだからこそできる」やり方をそのまま他ジャンルに持ち込んでしまったような印象で、二次創作の根源的な動機の見えてこないものが多いと感じてしまいました。
ゲームを入り口に音系同人に興味を持った人達にとって魅力的なものでは、なかったと思います。

そして、それは今の二次創作系の音系同人全体が纏っている雰囲気でもあるかもしれません。既存のリスナーに対してではなく、「ゲームを入り口に音系同人に興味を持った人達にとって魅力的なもの」は今どれだけ作られているのでしょうか。
まぁ同人活動は各々が好きなことをするものなので、どんなものを作ろうがそれぞれの自由なんですがね。……それが本当に好きでやっていることなら。

ちなみに今精力的に活動されている艦これアレンジ系のサークルさんは、魅力のある良いものを作っていらっしゃる方が多いです。そこは誤解しないで頂きたい!

音系同人はこれからどこへ行くのか

音楽の媒体はすごく増えました。敷居もすごく下がりました。
人に聴いてほしい、っていう理由だけなら今は色々な媒体があります。動画サイトやSNS、iTunesなどの有料配信サービスもだいぶメジャーになってきました。しかも、そっちの方が圧倒的に「聴いてもらえる」チャンスは多い。
それらを同人活動の中に含ませていくことは難しいことではないですが、「パッケージとしてリリースしなければならない」という今の音系同人の制約が、いずれ「自由に創作する」ことへの足枷になってはしまわないかな、とも思います。

視聴機器はPCを母機としてライブラリを構築するのが当たり前になりましたが、今のPCにはCDドライブがありません。音楽がCDである理由は、もうほとんど残っていないんですよね。
このあたりは私が音系同人の活動をやめてしまってもいいかな、と思うに至った大きな理由でもあるのでピックアップしていますが。パッケージを作りたいという人に「しか」魅力がない、というものに音系同人がなってしまわないことを祈りつつ。

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