メタルのプロダクションについて:収録編

2017.10.13 音系コラム

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最近山に行けてない上に今週末も天気が悪いとかなんとか。
悔しいので長文を書いて気を紛らわせることにします。

現役を退いてから、メタル系の音作りのHow Toをアウトプットする機会は減ったのですが。やっぱり定期的に出していかないと、自分のノウハウが自分の中だけに閉じこもってしまうので。
……昔自分が言ったことを否定(?)する意味でもちゃんと出しておかないといけない(何

適当にさっと書いて終わりにするつもりが、意外と長くなったので今回は録りについてだけ。
音源は作ったりするの面倒くさいので、ないです。

検索サイトとかから飛んできて、どうしても書いた奴がどんな音出してるのか知りたい人はこれでも流しといてください。
あんまりHR/HMしてませんけど。

まず最初に

「好きなバンドの音」じゃなくて「良い音」をたくさん聴いてください。自分が想像できる以上の音にはできません。
できればAndy Sneapがレコーディングからミキシングまでメインでやってる音源がいいと思います。

できればウチのミックス本の新しい方もちゃんと読んでください。タダじゃないんで無理強いはしないですが、2回くらい通して読んでる前提で書きます。
あと、この記事読んでる間だけでいいので、他所で書いてあるメタルのミックス講座みたいなのは記憶から抹消してください。

んでもって、ここに書いてあることが全てではないですし、ここにあることが100%オンリーワンな真実ではないです。
大事なことを書いているつもりですが、もっと大事なのは自分で考え実践し検証することです。その先にしか自分のセオリーは組み立てられません。

スタート地点の話

基本

これ、いつも一番最初に言うんですが。
どんな音楽でもプロダクションの基本は録り音。どんな技術も良い音で録るってのが前提の話。
9割くらいは録り音で決まると思ってください。

DTM歴が長くなってくると、意図と合わない音の音源を無理やり加工して目的の音に近づけるっていう、不健全なノウハウばかりが身につきがち。でもそれってかなり天井が低くて、総合的に見た時の「良い音」からはかなり遠いです。
……っていうか、意図に合った音選べてない時点で良い音とか無理です。

ソロで聴いて「これってもう何もすることないんじゃ?」と思うような音で録れるまで録り音を詰めて、ようやくスタート地点。

もっと基本

身も蓋もないことを言うと、演奏がヘタクソだとどうしようもないです。
まず、できもしないフレーズを録ろうとしないこと。そしてなぞる程度には弾けても、録れる段階には程遠いのでもっと練習しましょう。

弾けるかどうかだけではないです。良い音出せてないと良い音で録れないので。
特にギター弾きが弾くベースなんかがそうなんですが……。弾けもしないのにギターみたいな弾き方して、全然鳴らせてないような音になってるやつ。その程度だったら大人しく打ち込みましょう。

誰にでもできることをなぜしないのか

ピッチ合ってないのはダメです。チューニングしましょう。
どの弦、どのフレットを押さえてもチューナーがぴったり合うレベルまで合わせる……のが理想なんですが、さすがにそれは無理。
なのでそのテイクで録る範囲内だけオクターブが合う程度には調整しましょう。それでも左手のさじ加減ひとつで簡単にピッチ狂います。

つまりどういうことかというと、オクターブは必ずしも12Fで合わせる必要はないってことです。
そのフレーズに合った基準地点で合わせるっていう選択肢もあります。

あと、数テイク録ったらチューナーで確認してください。
10テイク録ったら弦を張り替え……なくていいですが、掃除はしてください。

ドラム音源選び

ドラムは録らない、打ち込みっていう前提で。
ちゃんとメタルに合ったドラム音源を選べるかどうか。

メタルっぽいロゴの音源じゃなくて、メタルに使う前提で録った音源です。
門外漢がメタルってこんな感じだろって言いながら適当に録った音源でもないです。

すっごく厳密に言うと評判の良いMetal Machineryもスラッシュメタル〜オールドスクールなメタル専用に録られてるので、これを読んでる人の大半には合わないと思います。
(PeripheryとPrimal Fear聴いて、Primal Fearの方が好きって答える人じゃないと多分合わない)

個人的には今風の音ならSSD4のTerry Date拡張音源を、オールドスクールなメタルをモダンなサウンドでやりたいっていう人にはMetal Machineを勧めます。テンポ遅めで粘り気のある曲をやるなら、SD3付属の音で頑張ってサウンドメイクするのが良いと思います(それができるだけのポテンシャルはあると思います)。

で、加工済みの音源を使う場合の一番のコツは、何もしないことです。
マジで何もしなくて良いです。加工済みの音源は、素人が追加で加工すればするほど悪くなると思っていいです。
……マジで。

追記:
そういえば、書き忘れてたんですが。色んなライブラリから寄せ集めてひとつのキットを作るのはやめた方がいいと思います。
エンジニアごとに思想って異なりますし、部屋によって空気感とかも違います。そういうのをごちゃまぜにしても、あんまり良いことないと思います。

さらに言うと、ひとつのライブラリの中でも異なる環境で録られていることが多々あります。できればそれも混ぜるのは避けたいですね。シンバルのバリエーションとか、結構苦労しますが。

ギターの録り方と音作り

Kemper含むアンプシミュを使う、っていう前提で話をします。
ギタリストの大半の夢を打ち砕くことになるんですが、HR/HM系のギターの音の90%くらいはスピーカー(≠キャビ)で決まります。
なんで良いキャビシミュ(やIR)と出会うところがスタート地点でありゴール地点です。

あとはTSCCとかTS9系のOD咬ましてローとハイを適度に落として、適当なハイゲインアンプ(シミュ)に突っ込めば大抵良い音になります。
できればODくらいはシミュじゃなくて実機を使いたい。KemperでウチのRig使うならOD要らないですが。

みんなマイク(とかIRとか)混ぜたがりますが、まずはマイク1本で良い音作れるようになってください。
ギターアンプのマイクに限って言えば、1+1は2でも200でもないです。0.5〜1.1くらい。
2本目のマイクは1本のマイクで確実に1を録れる人が、どうしても0.1足したい時に足すものだと思ってください。

アンプのツマミは、出音次第なんで何とも言えませんが……。大抵の場合Midはしっかり削った方がいいです。
ギターは中域が大事とかよくいいますがここはメタルです。忘れてください。
でもペラッペラな音になるまで削る必要はないです。アンプによっては最初から中域が全然出てないこともあるので、ツマミの位置は参考になりません。

アンプのマイク録りをするなら、まず電動ドリルを書いましょう。
そしてVintage30を10個くらい買いましょう。
録り方にコツはないです。当たりのスピーカーを引くまでひたすら課金してガチャを回してください。

ギターとかPUとかはピッチが合えばなんでもいいです。

ベースの録り方と音作り

ベースが一番難しいです。
まずコンプは絶対使いましょう。オプトコンプがお勧めです。
なんでオプトコンプかというと、VCA系は掛かりがキツすぎて音が詰まるので。パッシヴなベースを強く丁寧に弾くならVCA系でもいい、でもそれだとメタルじゃなくてロックになります。
そんなわけで、できればアクティブPUが載ったアクティブのベースを使うといいです。つまりEMGです。

PUの位置とかは好みによりますが、基本的にはフロントとリアのミックスだと思います。

アンプ側。
「ベースのアンプシミュ」は個人的にはあまり勧めたくないです。特に有名なAmpegのアレ。
そもそもAmpegってメタルじゃあんまり使わないような。

個人的にはEdenとかHartke、Gallien-Kruegerあたりのもっとソリッドでタイトな音で鳴ってくれるキャビのIRと、ベードラ以外の適当なペダルプリで音作りしてください。Hartkeのペダルプリがお勧め。
ベードラは低域がアレなんでメタルにはお勧めしないです。ミックス屋やってたときはベードラ通した音が来るといつも泣いてました。

低域は出しすぎないように。大抵、ブーストした低域は後でまるまる削ることになるので。
君のバンドのドラマーが「死んでもキックは踏まない主義」だったらロー出してもいいです。
でも、いくら混ぜても曲に芯が生まれないレベルのスカスカな音はダメです。

低域と高域でスプリットするアレは今や定番なんですが、知識のない人がやるとあんまりいいことないです。
スプリットするときは絶対にリニアフェイズEQを使ってください。この程度ならリニアフェイズじゃなくていいとか書いてある記事を見かけたんですが、とんでもない。
この時にリニアフェイズ使わなくていつ使うんだ。

まぁそう言う私が好きなベースのペダルもスプリットできるんですが、ペダル(=アナログ)なんでリニアフェイズじゃないんですよね……。

スプリットしたらキャビシミュ(≠アンプシミュ)通しておいた方がいいと思います。スプリットしなくてもキャビシミュ通した方がいいと思います。
つまりキャビシミュは必須です。

ヴォーカルの録り方

練習してから録ってください。

……だけじゃあまりにアレなんで。
ポップガードは使ってください。ストッキングとか言ってないで買ってください。
金属製のやつの方が高域残るんで良いです。
それだけじゃなくてマイク側のHPFも入れてください。なんか折れ曲がってるマークのアレです。

マイクとかはデス系ならSM58とかSM7とか。
それ以外はラージダイアフラムのコンデンサならなんでもいいです。
マイクが合ってないとか言う人たまに見かけますが、大抵の場合問題なのはミックスの方です。

あと下からとか、口と同じ高さから狙うのはお勧めしないです。
上から狙いましょう。鼻のあたりの高さから口元を狙う感じで。

マイクからは適度に離れてください。大雑把でポップガードが邪魔に感じないくらいの距離がいいんじゃないかと。

マイクプリ買った方がいいんですか?ってヴォーカルさんから聞かれること多かったんですが、安物のマイクプリ買うくらいならRMEとかのオーディオインターフェイスを買った方がいいです。
安物のマイクプリは音を良くする機材じゃないので買っちゃダメです。

スタジオで録る時はコンプ掛け録りしてないかチェックしてください。
コンプ繋がってたら外してもらってください。特に、曲聴く前から既にコンプ繋いでるようなのはNGです。

おしまい

メタルのミックスの話はまた今度。
本当はそっちの話がメインだったはずなのだけど。

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