メタルのプロダクションについて:ミキシング編

2017.10.15 音系コラム

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前回の録音系の記事が結構広まって、ちょっと意外な気分の私。
正直今更、反応とかないだろうと思ってたんですが。

そんなわけで今日は前回に引き続き、メタルのミックス全般について書き殴っていくことに。
本当はこっちが本題のつもりだったんですが、長くなっちゃったのでこっちに分ける感じで。
例によってミックス本読んでる前提で書くので基礎的な部分はすっ飛ばします。

ドラム

ドラムの基本は何もしないこと

前回の記事でも書きましたが、既にデザインされている音源を使う場合は、頑張ってどこかをカットしたりブーストしたりする必要はほとんどないです。
曲や、他の楽器とのバランスを見ながらどうしても必要な部分だけ足したり引いたりするくらい。HPFやLPFは必要になるかも。

あとは空間のデザインくらい?奥行きの調整とかは好みが分かれるのと、意外と変な加工しなくても調整できるので。
具体的に何をするといいのか、はミックス本の方に書いているので割合。

難しいのは最近増えてきている、途中まで音作りされている音源の方だと思います。
仕上げの部分はユーザーに任せるよ、みたいな感じですが、自由度が高いように見えて実際にやれることはそんなに多くないと思います。
前も書きましたが、その音源が自分の出したい音と本当にマッチしてるのか、っていうのを見極めることが大事。

パラレルコンプってなにをするの

インサートする形で掛けるコンプと違ってトランジェントが残りやすいのが送りコンプの利点……なんですが、思考停止してFET系のコンプでぶっ潰してると全然効果がない。
原音の何を強調したいのか、ってのを考えながらアタックとリリースを決めていくのが大事。アタック詰めればいいってもんでもないですし、むしろパラレルプロセッシングでもアタックは残してやった方がよかったり。

ベース

ベースはやっぱり難しい

メタルに限って言えば、この段階までくるとベースでやれることはそんなに多くないと思います。
モノじゃ話にならんのでステレオ化したり、キックの存在を残すためにある程度高い位置でHPFを掛けたり。

HPFを高い位置に入れなくても、キックの音に反応するようなコンプを掛ければキックとは分離するよ!ってSlateおじさんが言ってますが。個人的には分離はしても、ベースの低域でキックのOnとOffの区別が付かないっていう致命的な部分が解決しないので無しかなーと。
特にメタルみたいな速くて音数の多い音楽では厳しいんじゃないかと。

HPFの位置は、ベースが鳴り続けてる時でもキックの低域がちゃんと見える位置。踏んだ時と踏んでない時とで低域の量感にちゃんと差異がある状態を保てる位置にするといいです。
LPFも要ると思います。

真ん中に定位させることが多いので、他の楽器の大事なところをマスクしやすい楽器でもあります。
ベースは○○だからこの帯域はカットしちゃいけない、みたいなことは考えずに必要だったら削る勇気を。

ベースラインが見える帯域はついブーストしたくなりがちなんですが、最初にフェーダバランスを整えた時点で足りないと思わなければ足す必要はないです。
どうしても足したいときはEQを使わずに、エンハンス系で足すのが良いかなーと。キックを邪魔するのが嫌なので、シェルビングっぽい足し方じゃなくてピークで特定の帯域を強調できるようなのが良いと思います。

ベースのラインが見えることが大事なんであって、ベースの低域がモリモリになるのが大事ではないです。ブーストする箇所は所謂低域よりも少し上、キックとスネアの重心のちょうど間くらいになると思います。

個人的にはWavesのMaxxBassがお勧め。RBassの方ではないです。

ベースのミックスで実は大事なこと

3弦と4弦、もしくはローフレットとハイフレット。弦やポジションによって低域の出方って全然違うと思います。そこを均一にする必要はあるんじゃないかなーと。
私ならダイナミックEQで出過ぎた時だけローを締めてやって、ボトムの量感を安定させるようにします。ブロードバンドなコンプでべったり潰しまくるよりは良いかなと。

ステレオ化

すごく大事なことだと思います。でもそれは定位が曖昧になるコーラスとか、残響音が少しでも足されてしまうようなリバーブ系ではないと思います。

ギター(バッキング)

ギターって、あんまりやれることがない

録った後で加工しても絶対に良くならない楽器なので、難しいと思います。
とにかく、不要な帯域をカットすること。他の楽器をマスクするような帯域は抑えてやること。HPFとLPFで除去したエンドの部分は必要であればエンハンス系で補助してやること。それくらい。

ダブルで鳴らすときは(時々サンプル単位でタイミング合っちゃう人にだけ)フェイズスイッチ必須なんでお忘れなく。
押しても音が良くなったり悪くなったりはしないです。

Andy C4セッティング

最近ようやくAndyおじさんのC4セッティングが普及してきましたね。

それが何なのかは他所を読んでおくれ。でも何をしているのか、はちゃんと書いておいた方が良いかなと。
ウチのサイトよく読んでる人なら今更かもしれませんが、ブリッジミュート時の低域の暴れを防ぐのが目的。だからブリッジミュートしてない時は反応しないようにセッティングするのが基本。

あと、曲調やフレーズによってはC4掛けないよっておじさん言ってた。
まぁ思考停止して常に使うようなプロセスじゃあないですね。

個人的にはC4ってリニアフェイズじゃないんで、プロセスするだけで音変わるから使わないです。派生のC6とか、中身がC6な諸々のプラグインも同じく。
Waves持ってるならLinMBとかいいと思います。

M/Sは必須

ギターにM/Sプロセスは必須です。誰が何と言おうと必須。
何をやってるのか、具体的にはここでは触れません。多分、海外のフォーラム掘ってもマトモなトピックはほとんど出てこないと思います。

日本の音源でちゃんと対応できてるのは聴いたことがないので、海外のすごく音の良いやつをよく聴き込むといいと思います。
マスタリングでやっちゃうとメリットよりデメリットの方が遥かに大きいので、ミックスの時に。

主旋律系

ステレオ化

しつこいですが、やっぱりこれが一番大事かなーと。これをやってるのとやってないのとで、やっぱり全然印象が違います。やり方はベースと同じ。

あとは驚くほど基本に忠実に

歌もリードギターも、あとは基本的なノウハウに忠実にやること。メタルだからといって変わったことはあんまりないと思います。

強いて言うとしたら……、メタルの場合リードギターってすごく埋もれやすいので、その対策が必要だなーと思います。
バッキングと同じ音、特に同じキャビとマイクの位置で録るとどうしてもキャラが似通ったものになりがち。同じキャビでも狙うスピーカーを変えてみたりすると、多少はマシになるかも。
アンプシミュ環境だったら……例えば、同じMarshall+V30のIRでも別の環境で作られたものを使ってみるとか。

ミックス上達のコツ

メタルのミックス全般に言えること

メタルはプロダクションのガラパゴスなんですが、やってることは基本的にオーソドックスなノウハウの塊。
音数がクソ多いので、その音数の多さを犠牲にしないような選択肢を常に採り続ける必要があるっていうだけの話です。

あんまり突拍子もないイレギュラーなテクニックとかを紹介している記事は、よく読んでみれば「こんなテクニックもあるよ」とは言っても「それを常に使ってるよ」とは言ってないことに気付けるんじゃないかなーと。
それをあんまり深く読まずに第三者が「これが定番!」みたいな紹介の仕方をするのは……、この国では昔からよくあること。

……さて、ここから先はHR/HMに限らない話。

プラグインの使用回数を制限する

ひとつの音に二度も三度もEQやコンプを掛けるのはやめるんだ。音作りとミキシングで思考を分けるため、っていうのであれば良いと思いますが……。
トラックで掛けて、バスでも掛けて、トータルでも掛けて……みたいなのは最初のトラックの段階でちゃんと正しい処理ができていないだけのこと。最初の処理で確実に詰めるんだ、っていう覚悟が大事。

モデリング系プラグインの使用を制限する

できれば使わない方がいいと思います。ああいうのはツマミの位置で覚えてしまいがちなので。
数値で覚えてもあんまり良いことないんですが、ツマミの位置で覚えてしまうより多少はマシかなと。
音で判断できるようになって初めて使えるものだと思います。
まぁ音で判断できるようになると、別に要らないかなって思うようになるんですが……。

やったつもり、にならないこと

単にリバーブを掛けただけでは、そのリバーブの存在を認識できるのはあなただけだ。
特にメタルみたいな音の隙間の少ない音楽では、ただ掛けただけでは埋もれて聴こえないことが多々あります。なので、ちゃんと聴こえるようにマスクされている部分は取り除いてやることがすごく大事。
ミックスってのはそういったことの積み重ねです。魔法とかじゃないです。

あなたの言う通りにしましたがIn Flamesの音になりません、っていう面白い苦情を何度かもらってるんですが。
「私の言う通りにすれば上達する」んじゃなくて、自分の耳で聴いて自分の意思で判断を下せるようになるのがスタート地点。

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