TS系ODのススメ

2017.02.07 音系コラム

たまには音楽のことも書かないとね。山歩きサイトになってしまう。
というわけで今日はハイゲインアンプにTS系ODを挟むことについてお話します。

ライブ中の足下だけでなく、レコーディングで使用しているペダルについての情報も入手が容易になった昨今。HR/HM系のギタリストの足下に常にTS系ODがあることに疑問を持っている方も少なくないのではと思います。なぜハイゲインアンプにブースターを噛ます必要があるのか、なぜこの分野においてTS系ODが圧倒的なシェアを持っているのか、今回はそこを詳しく解説してみようと思います。

なぜTS系ODを挟むのか?

ハイゲインアンプにTS系ODを挟むのは、HR/HM界隈では定番と言っていいでしょう。恐らくその手のギタリストの9割以上がアンプの前にTS系ODを挟んでいると思います。
トランジスタアンプにチューブ感を足す、あるいはボリュームを上げないと歪まないローゲインなアンプに対して入力音量を上げることで歪みを加える……。TS系ODをブースターとして使用するというと、そのような用途が一般的ではないかと思います。果たして、プリ側で目一杯歪むハイゲインアンプに対してブースターを使用する意味はあるのでしょうか。そして、クリーン系ブースターではなくオーバードライブペダルが選択されるのはなぜなのでしょうか?

実はこのTS系OD、アンプのゲインアップが目的ではありません。主目的は別のところにあるのです。
TS系ODを挟むことで低域と高域を適度にカットし、不要なエンド部分を排除することでアンプ側の歪みをタイトに纏めようというのが狙いです。例えばブリッジミュートをした時。ハイゲインアンプに直では部屋が揺れんばかりにローが出てしまい、アンサンブルに溶け込みません。ベースとぶつかってしまいますし、ブリッジミュートをしていない時との低音の出方のギャップが凄まじいです。スラッシュメタル系の速いフレーズでは音が潰れてしまい、濁ってしまうかもしれません。
そこでTS系ODを挟むことで、その出過ぎてしまうローを抑えてタイトな演奏を聴かせることができます。これがまず第一の利点。

Mesa/BoogieのRectifierシリーズが発表され、ニューメタル系バンドに多用されることでハイゲインアンプというものが周知された時期。意外と芯の歪まない、そして野放しにしておくと凄まじい量のローが出てしまうRectifierに対して講じられた対策がこのTS系ODを挟むこと、だったのではないか……といくつかの記述から考えています。
(歴史的にはJCM900の方が先で、次にRectifier、そしてその1年後にPeavey 5150が出て今日のハイゲインアンプの方向性が固まった……と考えています)

TS系ODの使い方

では、TS系ODの実際の使い方を解説していきましょう。
まずアンプ側は歪みは軽く、ブリッジミュートした時に「ザクザク感」はなく、ちょっとブリブリした感じの歪み方になる状態で音を作ります。次にTS系ODをGain0の状態でOnにして、ブリッジミュートにザクザク感が加わるギリギリの所までゲインを上げていきます。
OD側のVolumeは……、基本的には「Gain0の時にOnとOffで音量が変わらない位置」に置いておきます。具体的に何時の方向に……とは言えません。機種によって、特にパッシブかアクティブかによってツマミの位置が変わってしまいますので……。
Toneもアクティブかパッシブかによって違いますが、これはハイの出方に応じて調整するとよいでしょう。自分の使うODのトーンがアクティブなのかパッシブなのか、そこを理解しておくと「何時を基準にするか?」というのがわかるので良いかもしれません(ToneもVolumeもアクティブなら12時、パッシブなら全開の状態からスタートするといいと思います)

あとは色々と普段頻繁に弾くフレーズを試してみて、ちょっと厳しいかな……と思ったらアンプ側のGainを少しだけ上げれば良いと思います。TS側で過度に歪ませてしまうのは、折角アンプを使うのであれば勿体ないので控え目にしておいた方が良いでしょう。
不要な低域と高域を除去するフィルターとしての存在意義は、ODペダルをOnにした時に既に得られています。

お勧めのODペダル

ハイゲインアンプ用のODペダルとしては、メイドインジャパンのMaxon製ODの人気が非常に高いです。特にMaxon OD808は定番中の定番、この機種だけでハイゲインアンプユーザーの6割くらいのシェアを占めているのでは……と思うほど。
TS系としてド定番な808系統のサウンドで、ToneやVolumeはアクティブなのでローゲインアンプに対しても融通の効くペダルです。そして何より、MaxonのODペダルはノイズレス。というか、ノイズがあまり気にならない良い設計です。

私が最近まで愛用していたのは同じくMaxon社のOD820。日本が誇るギタリストCharが愛用していることや、かのケンタウロに中身が近い……という話で有名なOD880の後継機で、18V昇圧とクリーン/歪みのブレンドが特徴……と言われている機種です。
個人的には「Gain0の時にほぼ歪まず、TS系の音の癖だけを取り出すことができる」という所が重要なポイントでした。正直に言って、ハイゲインアンプでがっつり歪ませた状態ではOD808だろうとOD820だろうと大きな差はありません。ですが、このほぼクリーンな状態でペダルのトーンだけを使うことができるというのが肝で、ローゲイン気味のアンプに対しても歪みの量は変えずにTS系の癖だけを付加できるというのが非常に大きな存在価値を持っていました。
他にもGain0の状態ではある程度低域が残り、歪みを足していくほどエンド部分がカットされた音になっていく……というのもサウンドメイキングに重宝しました。
キャラメルクランチ」や「アコースティック・エピソード」ではシングルコイル系PUとプリ管の歪むJCM800という組み合わせを多用していますが、アンプ直では高域が鋭過ぎるところをこのOD820で回避しています。もちろん、ローノイズな感触はOD808にも十分対抗できるほど!
かのAndy Sneapが愛用しているのもこのOD820ですね。今はどうか分かりませんが……。

TS「系」ではなくTS9に拘りたいんだ、という人にお勧めなのはこれまた同じくMaxon社のOD9。回路はほぼTS9と全く同じでしょう。キャラクターもOD808と似通っていますが、恐らく大きな違いはToneとVolumeがパッシブか、アクティブかの違いなのではないかなと(回路にはあまり詳しくないので、間違っていたら突っ込みお願いします)。大雑把にはアクティブ回路であればブーストも可能、パッシブ回路はブーストできない代わりにノイズレス……と認識しています。
Djentな感触を出したい場合には、このOD9のToneを全開にするのが良かった気がします(もちろん、グライコで突いた方がよりそれっぽくなりますが)。

TS系を挟む場合の注意点

TS系を挟む場合、当然のことながらアンプ直よりはノイズが増えます。ノイズゲートは必須なのではないでしょうか。
私は必ずTSの前にiSPのDecimatorを通しています。それも、DIを録る時には掛け録りで。それはなぜかというと、このノイズゲートを使ってハムノイズをカットすると同時に、ある程度不要な音もカットしてしまっているからなんですね。それをちゃんとモニタリングしながら、自分の意志でコントロールするのを目的としてノイズゲートは掛け録りしています。
ノイズゲートは、ステージ上では不要なハウリングを抑えることにも効果があるのでお勧めです。

場合によってはアンプのセンドリターン部分にもうひとつノイズゲートを噛ましても良いでしょう。ただ、それはPAさんやミキシングエンジニアが使用するノイズゲートでも同じような意味を持つ(アンプやペダルのハムノイズを抑えるのが一番の目的)ので、そこまで重要ではないかも。

最後に

さて、ここまでTS系ODのペダルとその扱い方について紹介してきました。
ここで注意点。まず、TS系といいましたがOD系ならほとんどどれも同じでしょう。Gain部分で増幅してHPFとToneを経由してクリッパーで歪ませる、という基本的な構造はODペダルであればほぼ全部変わりません。回路もほぼ一緒です。BOSSのSD-1等もクリッパー部分等で違いが見られますが、考え方自体はTS系とほぼ一緒。音の好みで選んでしまっていいでしょう。
また、ブティックメーカー系のペダルは正直なところ、あまりお勧めしません。ハイゲインアンプのブーストを主な用途として考えているペダルはほぼ皆無かと思います(大抵の場合、チューブアンプの代用が主目的なのではと思います)。TS系ペダルに関しては値段=クオリティの図式は成り立たないと考えて良いと思いますので、まず基準となるMaxon製のODを買って、それを基準に他社製のODを探してみるというのが良いのではと思います。

……と、そんな感じで今日はおしまい。良いTS系ODを選んで良いハイゲインライフを!

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