生録中心のミックスにお勧めのVSTプラグイン
今年は山ばっかりで全然DAW触ってないですが、最近メインマシンを買い換えました。
8年間使い続けてきたMac Pro 2010 + RME Multifaceの構成から、Mac mini 2018 + RME Babyface Proに総入れ替え。
凄まじい勢いでお金は吹っ飛びましたが、PCIeの呪縛からようやく解き放たれました。
Macならマシン買い換え後の環境設定も移行アシスタントで一発……ともいかず。
DAWは環境の変化に弱いのでクリーンインストール。
当然サードパーティのVSTプラグインなども全部入れ直しになるので、無闇に突っ込まずに今後も使い続けるであろうものだけを厳選して入れることにしました。
で、その厳選したものを今回は紹介してみようかな、と。
最近は割とプラグイン業界の浮き沈みに疎くなってきているので、割と枯れたチョイスが多いですが。
EQ:DMG Audio Equality
出会った時から、もうこれ以外の選択肢はないなと思ったEQ。
通すだけで音が良くなったりとかは全然ないんですが、HPFやLPFの掛かり具合がイメージ通りすぎて他のEQが選択肢から消えました。あと、操作性が割と良い。
ここにHPFを入れたらこういう音になって欲しい、という意図の通りに掛かってくれるのが非常に良いです。
味付けやがっつりブーストする用途ではあまり使いませんが、カット方向を中心にミックスするならこれが個人的にはナンバーワン。
リニアフェイズで使いたい時や、M/S(といってもMのみ、Sのみのどちらかにしか掛けられませんが)プロセスしたい時にも使えるので、ミキシングだけでなくマスタリングでも重宝するEQなんじゃないかなと思います。
コンプレッサー:Fabfilter Pro-C2
プラグインのコンプは色々ありますが、コンプレッサーとしての仕事を求めるならこれかな?
Fabfilterなので音ももちろん良いですが、単体でパラレルコンプとしても機能するので非常に便利。
オートリリースやサイドチェインフィルターも完備で、シンプルにコンプレッサーとしての機能の盛り込み方は割と理想的です。
よくあるモデリング系の余計な色付けもなく、コンプレッサーの仕事を淡々とこなしてくれるのが好印象。
Styleを変えるとトランジェントの変化だけ、FET系っぽくしてくれたりバスコンプっぽくしてくれたりするので、音色はEQや歪みで作って、コンプ感はPro-C2でコントロールすることができます。
ダイナミックEQ:Oxford Dynamic EQ
Waves C4から始まってOxford SuprEsserに落ち着く……かと思ったところに登場したOxfordのダイナミックEQ。
ダイナミックEQの中でも別格っぽい感じのSuprEsserを作ったところがダイナミックEQ作ったなら、もうそれを選ぶしかないよねっていう。
動的な帯域処理は基本的に、もう全部これ。でも1箇所だけ弄れればよかったり、ディエッサーとして使うならもっとシンプルなやつの方が迷わなくていいと思います。
トランジェント:Oxford Transmod
トランジェントデザイナー系はSPLみたいなツマミひとつのやつが便利でいいんですが。
アタックを立たせる時って、減衰する時間によって重心の印象が結構変わると思います。そのあたりを多少コントロールできるような気がするツールとして、Oxford Transmodは割と理想に近いプラグインなんじゃないかなと思います。
扱いやすいかというと……結構面倒なプラグインではありますが。
ゲート:Fabfilter Pro-G
生録主体ならゲートは絶対に欠かせないプラグインなのでは。波形切ったりするの面倒臭いもんね。
「先読みできて、サイドチェイン入力もできて、先読みした分だけアタックタイムを設けて、且つ先読みした分だけholdする」っていうことができるゲートってないかな……と探して、結局Fabfilterに落ち着いた。
数値通りに動いてくれているかどうかは……ちょっとわかりませんが(笑
ここのプラグインは、「こうあって欲しい」っていう要求に対してかなり的確に応えてくれる気がします。
エンハンス:Slate Digital Revival
昔は単品でフリープラグインとして出てた気がするんですが、今はVirtual Mix Rackの中のフリープラグインになってるみたい。
歪み系ですが、ギターのオーバードライブのような「歪ませる」用途ではなくてエンハンス用途で使っています。
要はEQでぐっとローやハイを持ち上げたい時は、EQだけでガーッとやるんじゃなくてこういうエンハンス系も併用してみるっていう。
録り音が曇ってるから高域をちょっとシャープにしたいとか、低域が物足りないからちょっと突きたいっていう時に、EQより先にまずこっちを試してみる。
エンハンス:Fabfilter Saturn
Revivalの強化版。特に低音をがっつり強調したい時はこっちを選びます。
マルチバンドの歪み系。その他の帯域はナチュラルなまま、ローエンドの部分だけめっちゃ歪ませてローエンドを際立たせたりとか、そういう使い方をすることが多いです。
Revivalだと極端に強調するのは限界があるので、こういうのもひとつあると便利。
歪み:Soundtoys Decapitator
こっちは逆に、オーバードライブ的な歪みを加えたい時に。
歪み方がギタリスト的に気持ちいいプラグインだと思います。キャラクターも選べて、ペダルストンプ感覚でトーンのカラーも弄れて、Dry/Wetも自由自在。
音さえ聴いていれば直感的に弄れるので、やっぱり迷わないのがいいですね。
リバーブ:Waves IR-L
コンボリューションリバーブっていうんでしたっけ。もうすっかり忘れてしまった。
オンマイクで録った楽器なんかにルーム系を足して、ニアな印象を和らげるのによく使います。
WUP期間中にDLできるWavesのIRが結構いい感じなので、買ったらすぐにDLして保存しておくことを推奨。
リバーブ:Waves TrueVerb
ハイクオリティなリバーブプラグインも無数にある時代、もうWaves初期のプラグインなんてレガシーもいいとこなんですが。
初期反射音を足すっていう用途に絞って言うと、どういうわけかTrueVerbが一番しっくりきてしまう。
主旋律にはこれがないと生きていけないっていうレベル。
一応ルームリバーブなんですが、ER以外は使ってないです……(笑
リバーブ:Lexicon PCM Native Reverb Bundle
画像はPlateのやつ。昔は結構高かったんだよなぁ……。
由緒正しきLexicon……ですが、コスパを考えるとそこまで突出したものではないかも。
ルームやプレート系なら今はValhalla DSPとかAudio DamageとかLiquidSonicsとか、なかなか良さそうなものを出しているところも多いですし。
リバーブ:2CAudio Breeze
生録用……かな?Epic系のホールでよく使ってます。
わかりやすくEpicな感じで掛かってくれるので、特にパーカッション系で重宝します。
ディレイ:Soundtoys EchoBoy
ディレイの劣化具合をアナログっぽい感じにコントロールできるので、Echoboyは重宝しています。
キャラクターもアナログやテープの様々なバリエーションの中から選べて、歪み具合や劣化具合もツマミでコントロールできるのでオケに馴染むディレイを作りやすいです。
歪みやフィルターだけでなく、ステレオ幅を調節したり、LとRに位相差を付けたりとディレイでやりたい小技が大抵これひとつでできるので、プラグインチェーンを無駄に増やさなくて済むのもありがたいですね。
フィルター:Soundtoys FilterFreak
Decapitatorっぽい歪みと2バンドのLFO付きフィルター。
録音物やドラムループにアナログフィルターっぽい動きをさせたい時はこれ一択。Soundtoysならではの歪みの音色の良さと扱いやすいフィルターの組み合わせはすごく便利!
なぜこのラインナップを選んだか
こうして見ると改めて、コンプやEQなんかは「通しても劇的に音が変化しない」プラグインを中心に選んでるなーと思います。
今のご時世、デジタル環境でアナログを再現するのがトレンド。古い機器のモデリングをずらっとチェーンして音を作り込んでいく……みたいなのが定番になっていますが。
個人的には、特に私のような方向性だと「アナログ感」みたいなのは録った時点で充分に備わっていると思っています。まぁ扱うのが「楽器っていうアナログなものがマイクを通った音」なんだから当たり前なんですが。
なのでミックスで使うツールは、EQであれば狙った帯域をカットすること、コンプであれば基準以上の音量をアッテネートすることを最重要視しています。
キャラクターの付与は必要であればやりますが、プロセスとキャラクターの付与は別のものとして分けて考える。
そういった理由から、こんな感じの淡白なプラグイン構成に至りました。
あとは、アナログライクなミックスはトランジェントを丸めていく方向ですが、私の場合むしろトランジェントをどんどん尖らせていくミックスが好きっていうのもあると思います。
締め
主に入れたのはこんな感じで、他にはiZotopeのOzoneとか入ってるバンドルも入れました。
歌モノなんかはiZotopeのデクリック系があるとすっごく便利ですね、と言おうと思って立ち上げてみたらライセンス切れてました。あれ……?
ちなみにどれもCubase10 + Mojaveで動作確認が取れています。
UADも長い間使っていたんですが、脱PCIeする時に切りました……。
UADのプラグイン自体は全然悪くなくて、操作性とかも含めてむしろ気に入っていたのが多いんですが。
Apollo TwinかBabyface Proかで迷って、最終的にBabyface Proの方を買ってしまって泣く泣く諦めました。
まぁ、使いたくなったらPCIeを挿せる外付けの箱とか買えばいいですね。
昔取った杵柄、プラグインのバリエーションだけは無駄に豊富。でも最後に物を言うのは、ツールじゃなくて腕なんですよね。
と、こんな感じで久々の音系コラムは終わり。環境一新したので、そろそろ曲も完成させたいなぁ。
ちなみに今日の写真は音が良くなるビールです。