コラム:ミニマムフェイズEQとリニアフェイズEQ
今日はバレンタインでした。そんなことよりEQによる位相ずれとか、リニアフェイズEQの過渡特性歪みとか、そういうのが気になる昨今です。
気になったので試してみました。
まずはイコライザーによって位相がずれるとかずれないとか、そんな話から。EQによって位相ずれが起こる仕組みについては、私にはちょっと自分の言葉で説明するだけの力がないので(笑)こちらを参考にして頂けたらと。
次にリニアフェイズEQ。線形位相がナントカで位相がずれないEQですね(すごく乱暴な説明ですが)。位相がずれない変わりに過渡特性とやらに歪みが生まれて、トランジェントが濁ったりアタックが遅くなったり(!?)するんだとか?
個人的にGoogle翻訳に頼りながら調べてみたところ、まず「処理が重い」というデメリットがあるというのを強調している記事が多いなという印象。確かに、リニアフェイズEQはレイテンシーが発生したりと重いですね。
次に「pre-ring」とか「pre echo」が発生するのでトランジェントが濁るよという意見が多かったです。
そのプリリングとかプリエコーというのはどういものかというと、こちらの画像を見て頂くのが一番かと。
上のトラックがリニアフェイズEQを使用していないもの、下のトラックはリニアフェイズEQで処理したものです。波形の前に、なんか変なヒゲのようなものが伸びてしまっていますね。これがプリリングとかプリエコーと呼ばれているもので、リニアフェイズEQを使用するとほぼ避けられない現象です。
実際には、このノイズ部分だけを聴いてもほとんど聴こえないレベルですが。
個人的にはトラック単体、あるいは少数トラックで比較してみても正直わからないなという印象です。……わからないので、もうちょっと派手に違いの出る音源を作って比較してみました。
普段私が使っているDMG AudioのEQualityはLinear Phase/Minimum Phaseを切り替えることができるので、マルチトラックのミックスダウンで実際に「通常のミックスをしたもの」と「全てをリニアフェイズEQで処理したもの」に分けて書き出してみました。
それが、こちら。
いつも通りですが、SoundCloudのプレイヤーで聴いてみても違いがわからないと思います。DL可能な設定にしているので、DLして聴いてみて下さい。
本来はこの音源、リニアフェイズEQも併用してのミックスだったのですが。今回比較するにあたって「一切リニアフェイズEQを使用しない」か、「全てリニアフェイズEQで処理する」ように統一しました。あと、リバーブは(位相反転して比較したりするのに邪魔なので)切っています。その他のプロセスは全部、まったく同じです。
個人的な感想はちょっと、今回は控えますね。私が先に意見を書いてしまうと、そっち側にバイアスが掛かってしまうので。
色々と探してみても「どの場面でリニアフェイズEQを使うべきか」というのは結構人によって判断が分かれるところで(それでもノイズが出るのデメリットを重視して、リニアフェイズEQに否定的な意見が多い)、なかなか難しいのですが。
ただ、個人的には時々位相歪みのないEQ処理を施したい場面があるので、そんな時はリニアフェイズEQを使用しています。使うべき場面とそうでない場面をよく考えながら使うといいのでしょうね。
あ、ちなみにマスタリングで位相歪みを防ぐためにリニアフェイズEQを使う、ということのメリットはあんまりないと思います。マスタリングのトータルEQで発生する位相の歪みは微々たるものだと思いますので、リニアフェイズEQで熱心に位相歪みを回避しようとする必要はないのかなと。
ただ、リニアフェイズEQだとEQのカーブやら何やらが緩やかになるとか何とか……らしく、その変化を好んで使う方もいらっしゃるとのことなので。使ってはいけないとか、そうとは言い切れないのですが。
個人的にはですが、EQのセッティングは最終的に耳で聴いて判断するので、まぁマスタリングはリニアフェイズEQじゃなくていいかな……と思う昨今です。
追記:2016年2月18日
マスタリングでリニアフェイズEQを使う必要はあんまりない……というのはちょっと語弊がありました。
リニアフェイズEQによって位相の歪みを防ぐことが有効である場合にはもちろん、マスタリングであってもリニアフェイズEQを選択する意味はありますね。
それがどんな場面かは……わかる人だけわかってくれればいいかな(何