iZotopeのNeutronを使ってHR/HMのミキシング
結局、あれから熱が出てしまい寝込んでました……。
今日になってようやく微熱程度まで回復したので、作業再開しつつ話題のNeutronを弄ったりしてみています。
Track AssistantとMasking Meterが特徴……というかアピールポイント?みたいな感じですが、触ってみた率直な感想としては「そこは重要な機能じゃない」という感じ。
デモの段階では「実はこれ、私には必要のないモノなんじゃないか……?」とか思ったりもしたんですが、少し使い込んでいくとちゃんと役に立ってくれるミックスツールだというのがわかってきました。
というわけで、今日はそのあたりの解説でもしようかと思います。
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実験台になってもらう音源たち
既に九州祭と紅楼夢でリリース済みのEPから、にとりちゃんの曲のアレンジが実験台に。比較的新しい音源で、混ぜてからそう日が経っていないので違いもわかりやすいかな、と。
なかなか癖のある録り音で、ギターインストの構成でしっかり主旋律と棲み分けしようと思うと手子摺ります。EPにはいつものSonnoxのSuprEsserやSlate DigitalのVitaminでスペースを作っていったのですが、Neutronを使うとどんな感じになってくれるのでしょうか……?
まずはTrack Assistantを使ってみる
なかなかスパイシーなプロセスを施してくれました。トラック単体で全ての空間を埋め切ってやるぜ!という執念を感じます。
これはこれでなかなか面白いのですが、私の欲しい音像とは掛け離れてます。
内容を見てみても「とりあえず使えるエフェクターを片っ端から使ってみました」という感じなので、一旦これは忘れることに。
ギターのプロセス
一旦Neutronをリセットして、自分に欲しい所にだけ欲しい効果が出てくれるようにゼロから弄ってみます。
普段はブリッジミュートを抑えたり、2KHz前後のピーキーでFizzyな帯域を抑えるダイナミックEQに真っ先に手が伸びます。NeutronのEQはダイナミックEQとしても使えるのでガンガン使っていくことにします。
こんな感じ。150Hz前後が中心の1バンド目は、(設定では)かなり深く掛かっているように見えますが。ブリッジミュートで刻んでいる時だけダイナミックEQが動作するように調整していて、実際にリダクションされるのは最大でも3〜4db程度。いわゆるAndyおじさんのC4セッティングですね。
2バンド目と3バンド目(表示上は4と5)の方は、1バンド目と違いほぼ常時リダクションされるようにスレッショルドの値を弄っています。EQでカットしてもいいのですが、特にこういった歪んだギターの場合はダイナミックEQの方が自然に削れるような気がします。
まぁ、この3箇所を触っておけば他には要らないでしょう。それでも主旋律や空間が埋もれてしまう、という場合には追加で何か考えると思いますが。
ついでに低域をちょこっと歪ませておきます。ボトムの部分をこれで少し強調して、両サイドのボトムのスペースをギターで埋める感覚。こういったプロセスはあんまり一般的じゃないかなという気はしますが……、個人的な好み。
そんな感じで弄ったのがこちら。原音と聴き比べてみると、割とプロセス自体はあっさり気味ですね。
ついでにベースも弄ってみる
ベースの方はどうしようかなぁと思いながら色々模索してみたのですが、ひとまず暴れっぱなしなローの部分をマルチバンドコンプで押さえ込んでみました。200Hz付近から下をがっつり均してみています。それより上の2バンド目は原音のままスルー。
EQの方はドラムの皮モノと妙に被っているような印象の200Hzちょい下あたりと、カリカリとした歪みが気になる2.5KHz前後をダイナミックEQでカット。これでうまく混ざるかなと思いきや、全体的に曇った感じになってしまったので場所を探ってみたところ400Hz前後でした。どうやら少しでも余ってると悪目立ちするようなので、スタティックなEQで8dbもカットしてしまいました。
最終的に全帯域カットみたいな感じになってしまって、これはこれでどうなのかな……と思いつつ。
他にもエンハンサーでボトム部分の量感を均したりするのもいいかなと思いますが、今回は使ってません。
ひとまずそんな感じで混ぜてみたのがこちら。かなり深くイコライジングした割にはあんまり印象変わってませんね。
今回は既に一通り調整が終わっている音源のプロセスをやり直すだけだったので、被り具合も見ながらさくっとNeutronを弄っておしまい。フラットな状態からミックスしたらまた違った視点でNeutronを見つめ直すことができるかもしれません。
とりあえず自分だったらこのプラグインはこういった場面でこう使うだろうな、という予測を立てることはできました。
Neutronはどう使うのか
売りであるTrack Assistantに関しては正直なところ、まだまだ発展途上な感じがします。Masking Meterに関しても実際に使ってみると「言われんでもわかっとるわ」という感じで、思ったほど革新的なツールではないみたい。
……それだけ言うと使い道のないツールだなと思いがちですが。実際、私も軽く触った程度ではそんな感じの印象だけでしたが。
いざ実際にミックスに使ってみると、棲み分けやトリートメントをするのに必要なツールがNeutronの中に全部入っていて便利。DAWのプラグインラックをいちいち操作してEQやコンプを立ち上げて……という行程を挟む必要がないので案外効率がいいんですよね。
特にEQ(+ダイナミックEQ)はなかなか便利。EQライクな見た目のダイナミックEQは、自分が今やろうとしていることを把握しやすいですし、ここはスタティックなEQで、ここはダイナミックなEQで……という選択も容易。
と、こんな感じの利点があるNeutron。個人的には、Advancedを選ぶ理由はあまりないので無印Neutronで良いかなと思います。
ただ全体的にレスポンスがやや遅いので、きびきび動いて欲しい+プロセスはひとつしか使わないのがわかり切っている場合にはAdvancedがあった方が良いかもしれませんね。
ひと昔前はこういったプラグインはなかなか低予算では買えなかったのですが、Neutronひとつ買うだけでだいたいのことはできてしまう印象。今までつぎ込んできたプラグイン代がまた無駄になっていく……(笑
ただ触ってて思ったんだけどコレ、音色がらっと変えるのすごく得意なんよね。ひとつのトラックだけ鳴らして無軌道に色々加工し始めると原型留めなくなっちゃうので、慣れてない人が触っちゃうと危ないと思う
— 鷹@M3 B13a (@crowsclaw) 2016年10月7日
ファーストインプレッションではこんなことを思ったりもしました。Neutronも最近のプラグインらしく、がっつり音を弄ってしまっても(その場では)意外と違和感がありません。油断していると、気がついたら原音とは似ても似つかない音になってしまっていた……みたいなことも珍しくはないかも。
最小の変化で最大の効果を得る、そこを意識して使うことができれば優秀なツールになってくれると思います。
Music Production Bundle II
ちなみにある程度予算がある方には、Neutron単体でなくMusic Production Bundle IIの方をお勧めします。Ozone 7 Advancedを買うのとほぼ同じ値段で買える……というのはかなりコストパフォーマンス良いですね。
私はOzone 5 Advancedからのアップグレードでこのバンドルにしました。OzoneのバージョンアップもMusic Production Bundle IIへのアップグレードも199ドルだったので、Ozoneを5から7にバージョンアップしたらNeutronとその他色々なプラグインがセットで付いてきた……みたいな感覚。
Ozone本家からは最初注文ができなかったのですが、サポートにメール送ったら何日か経ってから「お前のアカウントでも買えるようにしておいてやったぜ」的なメッセージが返ってきました。ありがとうiZotope。
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