【奥秩父】和名倉山:笹藪を掻き分けて進み破線ルートへと抜ける、奥秩父の最新部
2024年11月19日2024年11月19日登山:奥秩父・大月

登山情報
GPSログ
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コース情報
- 標高
2031m
- 標高差
1487.0m
- 累積標高(登り)
1506m
- 累積標高(下り)
2079m
- 行動距離
28.82km
- 行動時間
10時間43分
- コース定数
44.2
アクセス
往路:~JR中央本線 塩山駅 > 大菩薩峠登山口線 落合BS
復路:西武バス 三峯神社線 秩父湖BS > 西武池袋線 西武秩父駅~
一日目:落合BS〜将監小屋

2024年の春の連休登山のテーマは、まだ行ったことのないテン場に行くこと。
特に奥秩父にはまだ行ったことのない、魅力的なテン場がいくつもあります。
このエリアは夏になってしまうと暑くて登るのがしんどいので、春の連休はちょうどいいタイミング。
まず一つ目に目指したのは将監小屋。
奥秩父の縦走路にある広いテン場というイメージで、公共交通機関を使ってのアクセスは難しいのですが、行ってみたいなぁと思っていたテン場のひとつ。
今回はその将監小屋に落合BSから向かい、和名倉山を登って秩父へと抜ける、公共交通機関ならではのルートで歩いてみます。

山奥にはまだ桜の花も残る4月の終わり。
残念ながら初日は思いっきり曇り空で撮れ高に期待はできません。

公共交通機関を使って将監小屋に行こうと思ったら、塩山駅からバスに乗って落合バス停まで行く以外の選択肢はおそらくないと思います。
しかしバス停から登山口までは約7km、初日はほとんどテン場までの舗装路歩きが中心です。

一応、笠取山にも行けるルートではあります。
とは言えこちらのルートもとにかく長く、また笠取山には新地平バス停から笠取小屋を経由して登ることができるので、このルートを使う人はほとんどいないでしょうが。

このあたりはまだ、新緑には早いですかね。
一般道をひたすら歩くルートですが、標高差200mほどの犬切峠を越えていくのでそれだけでもちょっとしたハイキング。

一ノ瀬高原付近の集落エリアに入れば、そろそろ登山口。
ここまでバス停から約6km、自走登山ならここまで車で来られるので、和名倉山は日帰り登山も選択肢に入ってくるのですが……。
公共交通機関の場合は登山口に辿り着くまでに約7kmも歩くことになるので、さすがにそうはいきません。

噂の民宿みはらしの近くに登山口。
バス停から歩いて約1時間半、ようやく登山開始です。

といっても将監小屋への登山道は、舗装はされていませんが車でも登れるくらい整備された道。
危険な箇所や道に迷いそうな箇所もなく、とても歩きやすい道です。
登りごたえがないとも言えますが、登りごたえが欲しければ、将監小屋の先にいくらでもあるので……(笑

というわけでイージーな道を淡々と登って将監小屋へ。
荷揚げは軽トラで行っているようで、先ほどまでの道がよく整備されていたのもこれが理由でしょうか。
とは言え、登山口からの標高差は500mくらいあります。それを感じさせないほど歩きやすい道ではあるのですが。

テン場はとても見晴らしがよく、よく整備されていて設営も簡単。
水場の水も豊富で、困ることはありません。
トイレもとても綺麗で快適でした。
ちなみに、ここから先は水場がありませんので、奈良倉山に行く時はここでしっかり給水していきましょう。

設営後は尾根まで上がって明日の下見。
雨が降りそうな気配だったので、あまり遠くまでは行かずに早めに戻ることにします。

こんな空模様なので、あまり遠くまで行って事故るのも嫌ですし。
公共交通機関では出発が遅いのでちょっと厳しいかもしれませんが、余裕があれば飛龍山に行くというのも手ではありますね。往復10kmほどの距離ではありますが、そこまでアップダウンの激しい道ではなさそうです。

あまり天気が良くないことは事前にわかっていたので、今日はキャンプと割り切って、初日は移動メインでちょっと遊ぶ程度に留めて早めの就寝。
明日の本格的なピークハントに備えます。
二日目:将監小屋〜東仙波

二日目、予報通りしっかり晴れました。
今日は前日のような簡単な登山ではないので、養った英気を存分に発揮して登りましょうか。
奥秩父のさらに奥深くということで、日の出前に出発することはせず、しっかり日が昇るのを待ってから出発します。

アーベントロートのタイミング。
笠取山のように展望の良い場所があるエリアではないので、そこまできれいに燃えてくれるというわけではないのですが。
やっぱり、テント泊登山はこれを見てこそではありますね。

朝日に照らされた笹の稜線。
このあたりはまだ良心的な道が続きますが……。

この分岐から、奥秩父の縦走路を逸れて和名倉山への登りが始まります。

先ほどの看板から右手を見るとすぐに、こう。
今日は連休初日、冬の間にほとんど歩かれることのなかったであろう笹の道が完全に藪になっています。
この笹藪は西仙波付近の稜線に出るまでずっと続くので、かなりしんどい。
朝露に濡れた笹藪を必死で漕ぎながら進むことになるのですが、笹が濡れていると足を取られて滑るので、それも大変。
トラバース気味の道をひたすら歩くことになるので、滑落しないように細心の注意が必要です。
他の方の登山記録を見ると、ここまで藪が深いことはないようなのですが……。
春に行くとこうなのかな?
秋だと刈り進められていたりして、またちょっと違うのかもしれません。

西仙波の手前、リンノ峰が見えてきました。
このあたりでようやく藪漕ぎはひと段落。
張り詰めていた緊張の糸がようやく緩みます。




将監小屋を除けば、この稜線のあたりが一番景色は良いかもしれません。
奥秩父らしい、富士山を比較的近くに見られる展望はここでも健在。
地獄のような藪漕ぎから解き放たれて、一息つけるのがこの場所かも。

その後は奥秩父らしさのある、苔むした樹林帯の道を歩いていきます。
一箇所崩落気味なところもありましたが、全体的には厳しいアップダウンもなく平坦に進む道。
先ほどまでの険しさが嘘のよう。

マジックアワーは過ぎましたが、まだまだ朝日が良い感じに横から差し込んでくれる時間帯。
ただの苔も、この時間は美しく見えるものです。

樹林帯を黙々と進んで西仙波までやってきました。
ここからしばらくの間は見晴らしの良い、岩混じりの尾根歩きが続きます。

岩場ではありますが、斜度もキツくなく、心地よく歩けます。
この時間は逆光がすごいですが……(笑

振り返るとこんな感じ。
しんどかった笹藪エリアは左手の方に。
奥の方へと続いているのは奥秩父の縦走路、唐松尾山と笠取山かな?
このあたりはまだ春には早いかな、新緑を楽しめるようになるのはもう少し先のようです。

富士山も見えます。
こちら側から見ると、主役は奥秩父縦走路で、富士山は遠くに見えるといった印象。

そこからちょっと歩いて、東仙波へ。
こちらの標識はなんか目立たない感じ。
それなりに広い山頂で腰掛ける余裕もあって、展望も西より東の方が良いんですけどね。
東仙波〜和名倉山

東仙波から和名倉山へは、いくつかの小ピークを越えていくことになります。
約4kmの道のり、そこまで激しいアップダウンはないので気楽に行きましょう。




後々知ったのですが、このあたりはカラマツの植樹エリア。
春は、歩くには旬の時期ではなかったのかもしれません。
秋になると紅葉がきれいな山のようで、選択をミスったかなぁ。

まぁ、今回の主目的は将監小屋でのテント泊だったので、別に良いのですけど。

いや、でもこの尾根道を、この禿げ山の状態で登るのはちょっともったいなかったかな……。

この道は今日の下山ルートである、秩父湖へと続く尾根道でもあるのですが。
和名倉山の山頂は、その尾根道から少し逸れたところにあります。

この分岐から和名倉山へは、カラマツの幼木のトンネルを越えていくことになるのですが……。
写真、一枚も撮ってなかったですね。
この季節はまだ絵にならないというか、なんかよくわからないモジャモジャでしかなかったので……(笑
山頂手前も踏み跡があまり多くなく、ちょっとわかりづらい道が続くのですが。
伐採した気を運ぶために使われていた古いレールが伸びているので、多少道を見失っても大丈夫、かも?

いよいよ山頂が見えてきました。
といってもピークらしいピークがあるわけではなく、苔むした樹林帯の中に標識が立っているだけという、すごく地味な山頂なのですが。




でも、この森の中でほんの少しだけ空いたスペースと、木に掛けられた素朴な標識。
この雰囲気は個人的に、割と嫌いじゃないです。
木漏れ日に看板が照らされているのも雰囲気が良いですね。
和名倉山〜秩父湖バス停

山頂で一息ついたら下山開始です。
公共交通機関で登る場合、ピストンは賢明ではありません。
一応、落合バス停からは15:30発塩山駅行きのバスがありますが……和名倉山の山頂からは20km近く離れていますので、将監小屋でもう一泊しない限りほぼ不可能でしょう。
破線ルートではありますが、秩父湖方面へと降りていくのが唯一の選択肢。
多少踏み跡が不明瞭な場所もなくはないですが、他の一般的な登山道と難易度に大きな差はありません。
……標高差が1500mある、という点さえ除けば。

前述の、分岐から和名倉山へと伸びるカラマツのトンネル。
この時期はこんな感じでただの禿げ山です。本当に、なんでこんな時期に来たんだろう(笑




秩父湖へと伸びる道はこんな感じで、意外と普通。
踏み跡がまったくわからないくらい不明瞭な箇所はほとんどありません。
ピンクテープも巻かれているので、GPSアプリと登山地図があればそこまで迷うことはないのではと思います。

こんな感じで跨ぐのもひと苦労、な倒木もあったりしますが……(笑
それでも、道の大半はそこまで荒れてもおらず、歩きにくくはないと思います。

こんな感じで、古いレールの敷かれていたところがほぼそのまま、登山道になっているのだと思います。
さすがに使われてはいないようですが、おそらくこのまま残り続けるのでしょう。
このレールを見ながら道なりに歩いていけば、変なところに入り込むことはあまりないと思います。

標識には反射板と書かれているところ、登山道としては残り約2kmの地点です。
途中でそれなりに急な斜面を降りることもありましたが、いよいよ残り2km……と思って現在の標高を見てみれば。
まだまだ標高約1300m、下山する大洞川吊り橋の標高は約500mですので、この2kmで一気に800mも降ることになります。
ここから先はもう写真を撮る余裕もなく(笑
自分で選んだルートですが、どうしてこんなに容赦ない道なのか。
いや、逆ルートでは絶対に行きたくないですね。

というわけで、何とか下山。
いやあ、長かったですね。そして降りが激しい。
一生終わらないんじゃないかと思った……(笑

この斜面を一気に降りたってことです。キツいわけですわ。
もうちょっとなんかこう、加減の効いた道はなかったものか……。
と思って地形図を見てみましたが、なさそうですね。

秩父湖バス停から三峰神社までの間はフリー乗降区間なので、わざわざ秩父湖バス停まで行かなくてもバスに乗ることはできるのですが。
私はそれでも、そのまま置いていかれるんじゃないか……と不安になってしまうタイプなので、歩きます。
幸い、バスが来るまではまだ時間の余裕もありそうですし、せっかくなので秩父湖を見に行くつもりで。

しかし秩父湖を渡るのは、ちょっと怖かったです(笑
歩道がない上に、この道は三峰神社へと続く道でもあるので交通量が意外と多い。
混むのでさすがにかっ飛ばす車はありませんでしたが、人が歩くことをあまり考慮していなさそうな道だったので、すれ違うのが結構怖かったですね。
その後は、三峰神社でお客さんを大量に乗せたバスに押し込まれてぎゅうぎゅう詰めになりながら、秩父へと揺られていくことに。
そういえば、三峰神社も結構有名な観光スポットでした。
そりゃ、連休中はバスも混みますよね。
感想

簡単な山ではないことは知ってはいたのですが、いつまでも辿り付かない登山口に藪漕ぎ、そして下山ルートの急降下……と、奥秩父らしい地味な容赦のなさが詰まった登山でした。
自走していたら全然印象は違うのでしょうけど……(笑
でもあの笹藪の道を下山ルートとして使うのは、ちょっと怖いかなぁ。
旬の時期からは外れて、なんだか何をしに行ったのかよくわからない登山ではありましたが、がっつり登ってがっつり降りて、泊まってみたかった将監小屋のテン場にも泊まることができて、充実した山歩きでした。
いつか奥秩父縦走にチャレンジすることがあったとしても、この山は縦走路から少し逸れているので寄ることはないでしょう。
地味な山なのでお勧めしたい山リストに入ることはありませんが、そういう意味ではなかなか行く機会のない山でもあるので、この機会に登れて良かったかなと思います。
また登りたいかと訊かれると……、同じルートではもういいかな、と思いますが(笑
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