甲武信ヶ岳:残雪期テント泊装備で徳ちゃん新道を登る
2019年05月10日2023年10月09日登山:奥秩父・大月
登山情報
GPSログ
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コース情報
- 標高
2475m
- 標高差
1297.4m
- 累積標高(登り)
1576m
- 累積標高(下り)
1574m
- 行動距離
14.76km
- 行動時間
10時間24分
- コース定数
39.9
アクセス
往路、復路ともに:~JR中央本線 塩山駅 > 山梨交通 窪平・西沢渓谷線 西沢渓谷入口BS
……などと考えて今回選んだのは奥秩父の名峰、甲武信ヶ岳。
当初は鳳凰三山を登ろうと考えていたのですが、こちらはまだまだピッケルが必要な残雪期。今回は装備不足のためパスして、西沢渓谷から甲武信ヶ岳へと登ることにしました。
甲武信ヶ岳といえば徳ちゃん新道からの激しい急登で有名ですが、今回はそれに加えて冬型の気圧配置も重なり厳しい山歩きに。
事前の情報では「甲武信ヶ岳はまだ冬山です」。テント泊装備に加えて冬山装備もプラス、それなりに重くなったザックを担いで登ることになり、今まで登った山の中でも上位に入る過酷な山旅になりました。
一日目:西沢渓谷〜徳ちゃん新道分岐
塩山駅から朝イチのバスに乗って西沢渓谷へ。乾徳山や笠取山の登山口にも立ち寄るこのバスは、天気が良い日は大勢の観光客やハイカーで賑わいます。
なんとか座席を確保してバスに揺られること約一時間、登山口のある西沢渓谷へとやってまいりました。
ちょうどこの日は山開きのタイミングだったようで、バス停を降りるとイベントの準備で慌ただしそうな人々の姿が。
そんな光景を眺めつつ、準備運動をしてから登山口へ向かいます。
途中で別の登山口を素通り。
近丸新道なる道ですが、こちらは結構荒れてるとかなんとか。
テント泊装備で荷物も重いので、今回はパスします。
そうしてやってきた徳ちゃん新道のスタート地点。
キツいと評判の急坂歩きがこれから始まる!
とは言え序盤は穏やかなもの。
道も広くて歩きやすい道が続きます。
なんだ余裕じゃん、とか思ったら罠に嵌った証拠。
緩やかな山道に慣れた頃、唐突にやってくる急登。
さすがに直登ではないですが、それでもなかなかの斜度。
まだまだ序盤なので、ここで飛ばすと後がしんどいと思います。
心臓破りの坂を越えたら再び緩やかな尾根歩き。
徳ちゃん新道はメリハリが効いてますね。
そうして暫く歩いた先には、甲武信ヶ岳名物のシャクナゲのトンネルが。
この時期はまだまだ、見頃には程遠いですね。
さらに進んだ先には背の低い針葉樹が並ぶ、少し痩せ気味の尾根道が。
こういう道は高山っぽい雰囲気でいいですね。
そして、ちょっとした岩場を越えて。
別の登山道と合流して、甲武信ヶ岳へと伸びる戸渡尾根のスタート地点。
だいたい半分くらいは歩いただろう、ということでここで一回小休止。
徳ちゃん新道分岐〜甲武信小屋
さあこれから、と思ったらなんか寒い。
よく見たら雪が降り始めています。ごま塩じゃないです。
戸渡尾根を歩いていくと、次第に道に雪が目立ち始めました。
この時はまだ余裕気味、前回に続いて雪道になりそうで少しテンションが上がってきています。
苔も雪を被って冬景色。
サラサラした新雪です。
雪道いいなー、とか思っているうちに勢いを増してゆく降雪。
道の傾斜もどんどんきつくなっていきます。
足元には氷柱が。
多少の雪は想定してきましたが……ちょっと予想より寒いですね?
気がつけば一面の雪。
荷物の重さで次第にペースも遅くなり、トレースが今にも雪で消えてしまいそう。
雪の急登。テント泊装備の重いザックを背負いながらだと、なかなか進まない……!
体力も尽きて久しい頃、それまで木に覆われていた視界が突然開けました。
またすぐに樹林帯に入ることにはなりますが、唐突の岩エリア。
これは……落ちたらやばいやつ。
でも、雪を纏った斜面と木々が美しい。
この時点で既に愛機α7iiは気温の低さによってバッテリーが使いものにならなくなっており、止むを得ずモバイルバッテリーで電圧を戻しながらの撮影に。
新型のα7iiiは改善されているようですが、α7iiは寒冷地では厳しいですね。
モバイルバッテリーも端子が破損して使えず、数枚撮ってはブラックアウトの繰り返し。
ここから先は暫く平坦な道が続きます。
トレースから外れると膝まで踏み抜いてしまうので、トレッキングポールで入念に足場を確かめながらの前進。
道標にようやく、目指す甲武信小屋の文字が。
しかし、その前に木賊山のピークを超えなければなりません。
無雪期は巻道もあるようですが、この日はトレースがないためピークを目指すことに。
……といっても既にかなり標高を稼いでいて、特にキツい登りもなく山頂に到達できるのですが。
木賊山の山頂を越えると、一気に標高を下げることになります。
そしてここでようやく、目指す甲武信ヶ岳の姿を目にすることができました。
が、この日は山頂へは行かず、甲武信小屋で手続きを済ませてテント設営。
例年であればテン場まで雪掻きを終えているとこのことですが、今年は春の積雪が多かったために小屋の前だけで精一杯だったとのこと。
踏み抜きまくりのテン場で、スコップを使って初の残雪期設営。
到着が遅かったので美味しい場所は既に確保されていて、がっつり雪を掘ることになりました(笑
夜はかなり冷え込んで、早朝に眼が覚める頃には室内気温が-10℃まで下がっていました。
シュラフが3期用だったので就寝前はちゃんと寝られるか不安でしたが、ジオラインMWのおかげで寒さで目が覚めるということはなく。
足先はかはり冷えましたが、防寒用のダウンを足元に配置することで辛うじて回避。そう、こんなに冷え込んだのにダウンを着込まずに寝られたんですよ。
二日目:甲武信小屋〜甲武信ヶ岳山頂
持ち込んだ水が全部凍ってしまったので、仕方なく行動食を朝飯代わりに貪ってから日の出に合わせて甲武信ヶ岳の山頂へ。
小屋泊の方に聞いた話では踏み抜き地獄とのことでしたが、夜の間に道が固まったのか山頂までは歩きやすかったです。
日の出を山頂で迎えたのは私一人だけ。東側の展望が良くないので、敢えて日の出に合わせて登ったりはしないんでしょうか。
毛木平からのピストンで登る人が多かったのもあるかもしれませんね。
西側の展望が良い山頂を独り占め。
そこそこ風はありましたが、紫色に染まった奥秩父の山々を堪能できたのはなかなか良かったです。
展望は良くないですが、木々の合間から日の出を収めたり。
2475m、久々の百名山開拓。
ここまで来るのはなかなか大変でしたが、一度登ってみたかった奥秩父の名峰。到達できた喜びをしばらく味わいます。
山頂を堪能してから、朝日に照らされた道を下ってテン場に戻ります。
時間がギリギリだったので往路では写真も撮らずに進みましたが、山頂手前にも撮影スポットが。
この日の朝は空も澄んでいて、富士山がとてもきれい。
帰り道で光芒を撮る。
やはりloxiaを使うなら、これは撮っておかないと。
甲武信小屋〜西沢渓谷BS
そんなわけで朝の景色を楽しみつつ、テン場に戻ってまいりました。
あとは撤収して下るのみですね。
下るだけなら余裕っしょ、などと調子に乗ってのんびり後片付け。
ちなみにペグは残雪期用ということで、付属のペグではなく麻紐と竹で自作した竹ペグを使用しています。
下山ルートは、他に道がないので木賊山へ登り返します。
前日とは大違いの青空をバックに、甲武信ヶ岳を再び撮影。
ありがとう、また来る……いや、もういいかな(笑
まだ雪の残る奥秩父の山々。
この時期に主脈縦走するタフな方もいらっしゃるのだとか。凄いなぁ……、でも天気が良いと気持ち良さそう。
その後は再び木賊山のピークを越えて南へ。
雪の一本道をゆっくり下っていきます。
一晩ですっかり春の景色になりました。
この日は本当に富士山がよく見えましたね。
徳ちゃん新道の分岐点に着く頃には道に雪もなく、着けていたアイゼンを外してザックの中へ。
岩を越え……。
緑を越えて。
いざ徳ちゃん新道最後の急坂へ。
下山は余裕と思っていましたが、荷物の重さで思ったよりもペースが上がらない。
この斜度は下りでもなかなかハード。
急坂を下り終えれば、あとは緩やかな山道を歩くだけ。
登山口付近ではツツジが出迎えてくれました。
ゴール!
でも、ここからバス停までの1kmちょっとがなかなかキツい。
重たい荷物が肩に食い込んで、とにかく痛い!
カメラに冬山装備も含めて17〜8kgくらいはあったかなと思いますが、この重量では全然身体が動きません。
ようやく到着したバス停では、まだまだ桜が見頃。
タイミングが合わずに1時間ほど待ってから塩山駅行きのバスに乗り、甲武信ヶ岳テント泊登山は終了です。
帰りは途中の温泉に寄って帰るもよし、塩山駅から1kmくらいのところにある温泉に行くもよし。
ただ、駅前はコンビニとかがないのでそこだけはお気をつけて。
締めの一言
距離はさほど長くないのですが、片道7kmほどの登りで標高差は1300m。急登が多く、テント泊の重い荷物だとなかなか消耗の激しい山でした。
残雪期という条件も重なり予想以上にハードな山歩きになりましたが、これはこれでいい腕(足?)試しになったと思います。
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