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動画公開:Fallen Angel 2019 / Metal Machinery攻略

2019年09月08日2023年09月30日音楽

リメイクばっかりですが、今年は結構色々作った気がします。 去年はほとんど曲を作っていなかったので色々と勘が鈍っていましたが、おかげでミキシングの勘は少しだけ取り戻せてきたような。 というわけで、今回はYAMAGENさんヴォーカルのBlackened Fangs And Bloody Clawsから、Fallen Angelをリメイクしてみました。

まぁリメイクといってもこの曲、私の作った曲の中でも上位にくるくらいの二度と弾きたくない曲なので。ギターは録り直してません。
ギターはオリジナル版のDIソースをKemperでリアンプし直しただけ。ベースは録り直してドラムは打ち込み直してますが。
この曲のギターは全体的に弾きづらくてしんどいですし、今弾き直すより当時の勢いあるテイクの方が良さそうですしね。

そして今回リメイクするにあたって、改めて自分のミックスを見直してみました。
比較するリファレンスも刷新して色々と振り返ってみた結果見えてきたものもあり、今回はそのひとつとしてMetal Machineryの攻略法をメイン本文として書いてみようと思います。
なので今回の記事は長めかも。今回のリメイクをBGMに、最後まで読んでいただければ幸い。

今回のミックスを振り返ってみる

最近は自分の曲しか混ぜてないですし、作る曲も同じような楽器構成なので割と作業がテンプレ化していたのですが。それだと退化していく一方なので、今回は割と真面目にリファレンスと向き合って粗探ししてみました。

ギター

まずはギターから。
私の好みで言うとAndy SneapよりもColin Richardson寄りですが、今回は少しAndy Sneap寄りになるのを意識してみました。
といってもKemperでリアンプするのでアンプのセッティングは変えられないのですが。なので、自作のRigのキャビを自作のIRに入れ替えてみたり。しばらくずっとKrankensteinのRigばっかり使ってましたが、今回は懐かしのIronheartのRigを使ったりもしています。

Andy SneapがKrankensteinのヘッドとi5のマイクの組み合わせを推してた頃は結構ザクザクした質感の音だったような気がしますが。
ここ数年のプロダクションを聴いてると、割と中域寄りにシフトしている気がします。Accept然り、Judas Priest然り。最近出たKsEの新譜もそんな感じでしたね。

ベース

ベースはKemperで使えるプロファイルを探すのも、使い物になるレベルでプロファイルするのも難しい。
どうしたものかなーと思って色々模索して、今回はペダルのプリアンプで作り込みつつ、いつも使っているKemperのベースRigから、スピーカー部分だけ市販のIRを使いました。
うまく好みに合ったベースRigを使えればそれが一番良いんですが……、なかなかありませんね。

Andy Sneapが手掛けた時の特徴的なベースの音を模倣してみたいんですが、まだ研究途上。
納得のいく形にできたら何らかの形で手法を公開したいものです。

ドラム

ドラムは今回も、各プロセスをプリセット化したものを土台にしていますが、色々見直して改良しました。
何をどう変えたとかは書いても伝わらないので、次の項目でMetal Machinery攻略について書いてみます。

ヴォーカル

ヴォーカルのプロセスは……いつも通りですね。
以前の音源は結構がっつり潰してたので、今回はWavesのMV2でも使って対抗するかなぁ……と考えたりもしましたが、結局コンプはPro-C2一発で済ませてます。
あとは当時やっていなかったような詰めの部分を弄ったりとか。そんなところですね。

Metal Machinery攻略

ここまで読み飛ばした人もそうでない人も。
改めて、HR/HM系最高峰かつ最難関のドラム音源、Metal Machineryを攻略してみようという記事です。

リリースから約5年、ようやく使いこなせてきたような、まだまだ使えていないような。
買ってみたけどどうやって混ぜたらいいかわからない、っていう人実は多いんじゃないかと。
私なりに5年ほど使ってみて、この音源とどう向き合ったらいいのかをTipsとして書いてみます。

Metal Machineryとは?

Metal Machineryといえば私の尊敬するAndy Sneapのドラムライブラリ、Metal MachineのSDX版。
Andy Sneapが録った音、しかもTAMAのタイコにzildjianのシンバルということでかなり私好みのドラムです。

しっかり音の作り込まれたEZX版とは違い、SDX版の方はかなりrawな音で収録されてますね。
SDXはナチュラルといいつつ収録時に結構アウトボードで作り込んでいる印象のものが多いですが、これは本当に録っただけという感じ。

そうなると自分で好きなように加工できる…と思いがちですが、非常にアタック重視かつ響きのタイトなチューニングなので、守備範囲はオーソドックスなパワーメタルからスラッシュメタルくらいまでかなと思います。

Andy Sneapとは?

ちょっと脇道に逸れて、この音源を録ったおじさんに注目してみる。

Andy Sneapといえば最近Judas Priestでサポートギターをしてるとか、Arch EnemyやKsE、Megadethのミックスを手掛けたとか、そういうどこにでも書いてあることは置いておくとして。
世界中の宅録メタラー達が集うUltimatemetalフォーラムで神と崇められていて、Andy C4セッティングといえば今や宅録メタラーなら知らない人はいないほど。
ちなみにご本人はC4セッティングについて、あんなの一例だからテンプレにすんなよって言ってますが。

非常にアタックが立った奥行きのあるミックスが特徴で、その方向性としては世界最高峰。
スラッシュメタルのように音数の多いドラムとブリッジミュートを多用するギターの入った曲を、ひとつひとつの音を殺さずにまとめる彼の方向性はプレイヤーに支持されやすいのかもしれません。

そんなわけで信者も多く、多分彼が黒と言えば白も黒くなります。
OversizedのメサキャビとOD820pro最高だぜとか、そういうことを言ってる人は大抵彼の信者。
もちろん私もです。

方向性を決める

話を戻しまして。
この音源、特に皮モノの響きが独特なので、このドラム音源はどんな音を目指しているのか?を理解しておかないとなかなかうまくいかないかも。
Metal Machineを教科書にするのも手ですが、それだったらMetal Machineを使えばいいというジレンマ。

個人的には同じAndy Sneapがレコーディングからマスタリングまで一貫して手掛けた、AcceptのThe Rise Of Chaosが教材としてちょうどいいんじゃないかと思います。

混ぜる前にやること

と、前置きが長くなりましたがそろそろ実際に使う(混ぜる)時の話。
……の前に、もうちょっとだけ続くんじゃ。

まずデータ作り。
まずmidiデータ作りは丁寧に。そして打ち込みなので大げさなくらい抑揚をつけておきます。
打ち込みのドラムを生っぽく聴かせる一番のポイントは、個人的にはタイミングのランダマイズではなく強弱の振れ幅だと思ってます。
まぁ完全なランダムでよければ、ランダマイズはDAWの方で勝手にやってくれたりしますね。
あとは2拍4拍のスネアをちょい遅らせるくらい……かなぁ。

被りの設定も忘れずに。
Andyのような音を目指すとなると、音の洪水に埋もれさせて誤魔化すことはできないので、デフォルトのままだと後で苦労します。

あとはアンビマイクの扱いについて。
近い位置と遠い位置、あとモノラルで一本立ってますが、全部フルで鳴らす必要はないんじゃないかなーと。
それぞれのアンビマイクに何をさせるかを明確にして、必要なものだけ鳴らすようにしていいと思います。

あ、別のSDXとかと混ぜて、ごった煮のキット作るのはやめときましょう。
普通に使っても混ぜにくい音源なので、そうやって難易度上げるのはまた今度。まずはMetal Machineryを単体でちゃんと使いこなせるようになりましょう。

で、最後に。
こんな素の音だけど、いきなりコンプやEQで音を作り込んじゃうのはNG。
そういう音源だからこそ、まずは他の楽器も含めて全体のバランス調整から。最終的な形を想定してバランスをラフにでも整えて、そこから各トラックをどう扱うかを考えていきましょう。
ゴール見えてないうちからエフェクターとか立ち上げるのはだめです。

さて、それじゃあトラック毎のプロセスについて解説していきますか。

トップマイク

OHかCymbalのどちらか片方を使えばいいと思います。絶対に両方使わないといけない、ってことはないですよね。
左右の広がりがあるのがCymbalの方、散りすぎずに自然な定位感を得られるのがOHマイクの方かと思います。

どちらを使うにしても、混ぜる時にトップマイクのスネアが邪魔になってくるので、スネアだけ引っ掛かるようにコンプを掛けると後が楽。
EQも同じく、スネアの被りを適度に抑えられるようにするといいですね。
あと、メタルのトップマイクは潔くシンバル用と割り切った方がいいと思います。どうせ被りなんて濁るだけで、メタル系の音作りにプラスの効果はないですから。

キック

もはや定番となっている、メインのダイナミックマイクとシートタイプのコンデンサーマイク、そしてサブキックという組み合わせ。
基本はダイナミックマイクをメインに使えばいいかなーと。やっぱり芯のあるドラムの音を出すにはダイナミックマイクの方が適してます。
そこから高域の金属的な質感を足すのにコンデンサーマイクを、低域の量感を補足するのにサブキックを足す感じで。
ただ、どちらも軽く足す程度。一定のラインを超えて、ダイナミックマイクとの比率が1:1に近づけば近づくほど、期待する効果から遠ざかっていくような印象があります。

最近はサブキックトラックについて、もしかして要らないんじゃないか?とも思い始めてます。サブ低音がなくても、バンド系に合わせるなら充分すぎるほど下は確保できてるよね、という気もする昨今。

コンプは使わない……ってことはないですが、ちょっと締めて整える程度。がっつり音作りに使うっていう感じではないと思います。

Rawな音源なのでEQカーブは結構激しいですね。
最近改めてリファレンスを色々聴いてみて、低域の量感は曲によって最適解が結構異なるなぁ……と思ったりして。
Andy Snepaのプロダクションでも、オーセンティックなJudas PriestやAcceptでは低域の量感は多めですが、Killswitch EngageやMegadethのように音数多めのバンドに対しては割と絞ってきています。
些細なことですが、低域の量感で印象も変わってくるので、そのあたり意識しながら混ぜてみるといいかもしれません。

まぁ、Djentなんかは低域出しまくってコンプでぶっ叩いてる印象ありますが。

スネア

Metal Machineryで一番悩むのがスネアじゃないかなーと。
メタルのスネアというとコンプでぶっ叩いて余韻を強調する、みたいなイメージが未だにある(人もいる)かと思うんですが、この音源ってそういう風に作られてないので別の考え方でアプローチする必要があると思います。

この音源のスネアは余韻がかなり短いので、HR/HMのギターの壁の中ではオンマイクの音だけで余韻まで聴かせるのは難しい。なので、オンマイクはアタック用と割り切ってダイナミクス処理しちゃいます。
じゃあ余韻は何で作るのかって……?モノラルのアンビエントマイクがあるじゃないですか!

タム

ちゃんと被り量は調整したか?
ちゃんとX-Drumでトリガーシグナルを捏造したか?

Metal Machineryにはトリガー用のサンプルがこっそり付属しているので、レイヤーしてタムの実音と一緒に鳴るようにしておきます。
それをサイドチェインのシグナルとして扱うことで、被りの影響を気にせずタムにゲートを掛けることができるわけですが。トリガーサンプルの余韻の影響を受けたくないので、予めレイヤーしたトリガーサンプルはSuperior Drummer側でばっさり余韻を切ってしまい、叩いた瞬間だけ音が鳴っている状態にしてしまいます。
あとは実際に鳴らす方の音を聴きながら、きれいに余韻が残るようにホールドタイムやリリースタイムを調整していきます。

ちなみにタムにゲートを掛ける時は、ゲートが閉じた状態で無音になる=ノイズゲートとして使うのではなく、閉じた状態でも小音量で鳴っている状態を維持する=エキスパンダーとして使う方が良いと思います。

コンプとかEQとかは、まぁお好みで。
ちなみにHPFはまとめて掛けずにタムひとつひとつ調整して掛けるんだぞ。

まぁドラム「音源」なんで、被り切りまくっちゃえば要らないんですけどね、このプロセス。

金物のオンマイク

HHとかライドシンバルとか。
視聴する音量次第で遠近感が狂いまくるので、HPFだけじゃなくてLPFも必須かなーと。何も制限掛けずに金物鳴らしてると、小さい音で聴いた時とかに目立ちまくるので。

あとは、EQは主にスネアの被りを除去するために使うような感覚で掛ければ良いんじゃないかな。
金物のオンマイクはトップマイクの補助として使うことになるので、トラック単体で頑張ったところで何か良いことがあるっていうものでもない気がします。ただ、良くないことを取り除くことはできる、かなー。

ルームマイク、アンビエンス

この音源とお付き合いする上で、考えないわけにいかないのがルームマイクやアンビエンスの類。HR/HMのギターの壁の中ではすぐに埋もれてしまうので、割り切ってリバーブだけにしてしまっても良いのかもしれませんが。でも、リアルな音像が欲しかったら、こいつらとの戦いは避けられません。

特定の楽器の余韻を操るアンビエンストラックとして扱うのか、それともきっと全体の空気感を司るルームマイクとして扱うのか。そのあたり、はっきりと役割を分けることがこの音源においては超重要。

スネアの項目でも書きましたが、この音源はスネアの響きに伸びがないので、私はモノラルのアンビトラックをスネアの余韻ツールとして使ってます。
収録したドラムだとトリガーを使わないと同じことはできませんが、これはドラム音源なので。そのあたりは割と柔軟に。

最後に

ここに書いたのはあくまでMetal Machineryの攻略法であって、他の音源にもそのまま使えるかというと……そうでもないかなーと思ったり。
ジャンル的にはHR/HMにしか使えない考え方ですし、音源的にはスラッシュメタル系にしかマッチしませんし。
個人的には神がかった音源だと思いますが、割とニッチ向けな音源だとも思います。

オチ

色々とやりたいこともやれて、書きたいことも書けたので、今年の音源公開はこれで一区切りかなぁ。
秋山シーズンになったらまたしばらく山日記がメインになると思います。
それはそれとして、Andy Sneapについて掘り下げた記事は書いてみたいなーとも思っています。

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