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天狗岳:厳冬期登山への挑戦

2019年12月31日2023年09月30日登山:八ヶ岳

登山情報

GPSログ

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コース情報

標高

2646m

標高差

766m

累積標高(登り)

769m

累積標高(下り)

763m

行動距離

10.88km

行動時間

5時間59分

コース定数

22.18

アクセス

往路、復路ともに:~JR中央本線 茅野駅 > アルピコ交通 奥蓼科渋の湯線
2019年の登り納めは、私のこれまでの山歩きの中では最大の挑戦になりました。 それは、厳冬期のテント泊と森林限界。 エクストリーム一歩手前、一般人にとっての登山の限界地点のひとつです。

年の暮れに、当然ながら未体験の出来事の連続となった今回の登山。
色々と反省点も踏まえながら振り返ってみようと思います。

渋の湯〜黒百合ヒュッテ

当初は富士見平小屋にテント泊して金峰山に登ろうと思っていたのですが、天候とバスの運行が噛み合わずに断念。
それでも今年は厳冬期の森林限界の上の世界を拝みたい、と来年の予定だった天狗岳を目指すことに。
プランが決まったところで山岳保険の申し込みもしてXデーを待ちます。

今回は1日単位の保険でしたが、来年からは年間申し込みにした方がよさそうですね。
というのも、1日単位の保険の場合、万一遭難した場合、申し込んだ期間内に救助されなかった場合は保険が適用されないこともあるそうで。

そんなわけで今年二度目の渋の湯へとやってまいりました。
この時期もバスは土日祝日は運行しているのでありがたいですね。
一台では乗り切れずに増便が出て、さらに道中でチェーンを巻いたりもしたので到着は遅め。
そこから慣れない準備をしたりするものだから、出発する頃には時計の針は11時を指していました。
まぁ今回のプランでは、初日は黒百合ヒュッテまで行ければいいので問題はありませんが。

事前の情報では、麓の方は雪がないとのことでしたが。
直前に雪が降ったようで、登山口から既に完全な雪山仕様。
チェーンスパイクでいいかなと思っていたんですが、序盤から12本アイゼンを装着。

まぁ、実際にはしっかりと道は踏み固まっていたので、黒百合ヒュッテまではチェーンスパイクでも問題なさそうでしたが。

所々岩が露出しているので、12本爪だと引っ掛けて転倒したりします。
なので、慌てず確実に一歩ずつ。

序盤の樹林帯は一面、銀と黒の世界。
雪の被った針葉樹をカメラに収めながら、あまり焦らずに進んでいきます。

縞枯山にも似た樹林帯の登りを登った先には、日の差し込む雪の世界。
やはりこの季節はこれくらい雪を纏っていた方が楽しいですね。

時折、木々の合間から青空が顔を出してくれます。
八ヶ岳ブルーとはこれのことか。樹氷の白と青のコントラストに、思わず見入ってしまうほど。

ここまできれいに新雪を被った道を歩くのは、これが初めてかも?
なので、延々続く樹林帯歩きも全然飽きない。

ここまで立派な樹氷を見ることができたのは、今回が初めて。
隙あらばカメラを構えたくなります。

そういえばα7IIIに変えてからは初の雪山。
α7IIではこの寒さだと、あっという間にバッテリーの電圧が下がってしまうのですが。さすがはα7III、全然びくともしない。
まぁそんなα7IIIも、最後には悲惨な結果になってしまうのですが……それは後述。

新雪の感触を楽しみながら、さらに先へ。
一度来た道だと、現在地や残りの距離がなんとなくわかるので、重い荷物でも気が楽ですね。
……家に帰ってから測ったら水も込みで20kgありましたが。

日の入らない場所ではこんな感じで白と黒。
ほとんどモノクロみたいな世界です。

彩りはないですが、それでも楽しいんですよね。
雪山はひとつの極限の世界なので、常にリスクと隣り合わせではありますが。

都心ではまず見ることのない非日常。
登山に求めるもののひとつに非日常的な光景というものがありますが、ここはまさにそれの連続です。

そうやって歩いて、ほぼコースタイム通りの2時間。今回の宿泊地、黒百合ヒュッテに到着です。
増便が出るほどの人の多さから何となく予想はしていましたが、結構人が多い!
せっかく重荷を背負ってここまで上がってきたので、さっさと受付を済ませて設営開始です。

黒百合ヒュッテの夜

さて。ここまで順調な工程でしたが、ここで問題と反省点がひとつ。
雪のテント泊はまず場所作りから始まるので通常よりも時間が掛かるのですが、その間に身体が冷えて大変。
特につま先が冷えて結構焦りました。普通の3シーズン用だったので、これはもしかしてピンチなのでは……?とも思いましたが、原因は実は靴ではありませんでした。
寒さ対策に導入したインナーソックス。これのサイズが合っていなかったらしく、足の指の血流が悪くなっていたよう。寝る前にもしやと思ってソックスを脱いでみたら逆に暖かくなりました。
着込めば暖かくなるものと思っていましたが、血流を妨げないことはそれよりも遥かに重要だったんですね。
もちろん、インナーソックス自体が悪いわけではありません。

そんなわけで設営を終えて遅めの昼食も採って、ようやく一息。
小屋の裏の斜面でピッケル遊びでもしようと思っていたのですが、日没が近いので諦め。
今日はもうやることもない、と小屋のビールを一杯。
山に登ったらビールでしょ、と思っての一杯でしたが、さすがに外で飲酒は寒い!
この時期は熱燗かホットワインの方がいいですね。焼酎のお湯割なんかも温まります。

こちらがピッケル遊びをしようと思っていた裏の山。
この日は天気も良かったのですが、こうして切り取ってみると寒そうですね。
まぁ寒いんですが。

雪のついた木々がひねり揚げのよう。
あれって結構カロリーお化けなイメージがありますね……。

小屋の裏手の山々がアーベントロートで赤く染まる。
うまく写真に収めたいんですが、なかなかあの美しさはうまく表現できないですね。

日没後は今回新しく導入したシュラフの暖かさを体感して……いたら、いつの間にか寝てしまいました。
ちなみに買ったシュラフはNANGAのAURORA light 900DX。山渓さん別注のオールブラック仕様で、通常よりもかなり安く買うことができます。
リミット-37℃とかいうオーパーツ。-15℃超の極限環境のはずなのに、インナーだけで寝られるんじゃないかっていうくらい暖かい!
1kg以上のスーパーヘヴィ級シュラフですが、この暖かさはそれを考慮してもなお導入する価値がありますね。

2〜3時間ほど寝たところで起きて飲み直し。
20時半の消灯まではお酒も買えるので安心です。

星を撮りたいので消灯時間まで晩ご飯を作って待つ……予定が、お湯が沸かない。
軽量化を狙ってガス缶を110サイズにしたのは大失敗。性能を維持するためには250サイズの新品を持っていくのが正解だったかな。

(あまり美味しくない)晩ご飯は作れましたが、雪から水を作ることができないので今後の水の確保が心配。
そんなこともあろうかと行動食は多めに持ってきたので、翌日は調理せずに行動食だけを採ることにします。
私の場合、テント泊だと食欲の沸かないタイミングというのが必ずあるので、こんな感じで調理のいらない食料を必ず一定量確保しておくことにしています。
食べやすくて塩気とカロリーがあり、腹持ちのいい柿ピーと、糖分が嬉しい羊羹。私の場合、主な行動食はこのふたつ。夏場はこれに加えて色々とリフレッシュできるドライフルーツや、塩分補給に最適な梅干しも持っていきます。

小屋が消灯したところで三脚を取り出して星空撮影。
ほとんど新月のタイミングで絶好の好天、空一面に広がる星が嬉しい!
星だけを写すとあんまり面白くないことがわかったので、ちょっと木々も入れたりしています。

小屋の方を撮ってみてもいい感じ。
このためだけに三脚を担ぎ上げた甲斐がありました。

黒百合ヒュッテ〜東天狗岳

夏に登った時は日の出のタイミングで山頂に着くように計算して出発しましたが、さすがに今回はそんな無茶はせず。
厳冬期の森林限界を、ピッケルを刺しながら歩く。それはあまりにも未知の世界なので、日没1時間前にテン場を出発するプランでいきます。
テン場から徒歩5分の中山峠まで出れば、日没1時間くらい前から明るくてヘッドライトも要らないはず。そういう計算です。

予想通り、出発してすぐに東の空が明るくなりました。
前回はほとんどずっと暗闇の中を歩いていたので、この稜線を目に収めるのはこれが初めて。
朝焼けに照らされるあの道を、これから登るのだ。

厳冬期の森林限界は死の世界。
この日は風もない好天とのことでしたが、それでもバラクラバ越しに音を立てる風の音がなかなか怖い。
身体を持っていかれそうになるようなことはなかったので、慣れた人ならこの程度、そよ風みたいなものなんでしょうが。

奥秩父の山越しに、日が昇るのが見えてきました。
金峰山だとこの時間に森林限界に出るのはちょっと難しいかな?

モルゲンロート。
場所は微妙ですが(笑)、雪を赤く照らす光景はなかなか感動もの。

冬の天狗岳の一番の難関はこのあたりかな?天狗の鼻付近。
トレースがあるのでおかしなところに入り込むことはありませんが、それでもうっかりトラバースルートに入ったりしちゃう。夏に一度来てなかったらビビって、ここで引き返してたかもね。

しかしそれを越えた先には絶景が待っている。
山頂が見えた時は感動しました。あともう少しで私もあの場所に立つのか、と思うと。

そしてラストスパート。
吹き付ける風は強いですが、ここまでくるとそれも気にならない。……嘘です。寒いです。
ちなみにグローブはBlack DiamondのSoloist Finger。去年の黒斑山と北横岳のために、5本指のやつより暖かいということでこちらを選んだのですが、日帰り登山だと出番もなく。今回ようやく使う機会を得ました。

厳冬期用のグローブがその真価を発揮するのは、ピッケルを持った時かもしれません。
気温は黒斑山や北横岳とさほど変わらないくらい、この日は結構暖かかったです。でも、Soloist Fingerでもピッケルを持つ方の手は若干の冷たさを感じたほど。
金属を持つ、というだけで結構違うものだなぁと思いました。

ちなみにピッケルはPETZLのGlacier。縦走用のピッケルとしてはかなり軽い方で、店頭で持ち比べた時にその軽さにびっくりしたもの。品薄になるタイミングもありそうだったので結構早めに買っておいたやつです。
振り返ってみればこの時のために色々、買い物だけはしっかり計画的に準備してますね……(笑

さて、ちょっと引っ張りましたが山頂に到着です。寒さのおかげでろくな写真撮ってないですね。
寒さというか、Soloist Fingerだとα7IIIを操作するのが結構大変。いつもは親指AFできるように設定しているんですが、誤操作が多い!
冬山の時は親指AFは捨てて、半押しAFにした方がいいのかもしれませんね。

西天狗岳〜渋の湯

東天狗岳の山頂から見える硫黄岳。
夏の時の美しかった稜線は、銀世界に変わっていました。

そして西天狗岳。
さくっと行ける距離ですが、登りが結構激しかったイメージがあって行くかどうか少し悩みました。

が、昇ることにします。
驚いたことに、東天狗岳〜西天狗岳間はほとんど無風。
たまたまなのか、そういう地形なのかわかりませんが、西天狗岳の登りは結構急なのでこれはありがたい。

問題の急登も雪のおかげで登りやすく、さほど恐怖を感じることもなく無事西天狗岳の山頂へと登頂することができました。
東天狗岳の山頂は高所+雪の恐怖感があってあまり長居しなかったのですが、西天狗岳の方は広いので安心。

こちらなら落ち着いて南八ヶ岳を撮ることができます。
こんな時期の赤岳に登ったりする人もいるんだなぁ……。
……そういえば身内にもいましたね?

そしてこちらは北八ヶ岳。
浅間山や北アルプスも遠くに見えますね。

つい先ほど登っていた東天狗岳。
こうして見ると下りが結構エグいですね。

つい厳冬期レンズ交換をしてしまう。
どうしてもloxiaの光芒の力を借りたかったんだ。

さて、降ります。
登山口で警察の方に掛けられた言葉を思い出しながら。
「下山の時に事故が多発しています」と。
そう、いつも転ぶ時は下山の時。今回はいつもよりさらに慎重に降らねば。

滑らないように気をつけつつ、帰り道は写真もいっぱい撮ろう。
などと考えながら雪を被ったハイマツを撮ってみたり。

帰り道は東天狗岳を少しだけ巻いて。
巻道の方は踏み固まってない感触もちょっとあったので、足の運びは慎重に。

難所の天狗の鼻もうまいこと巻いて、さてもうすぐ樹林帯。
その前に撮り収めておこう。
などと振り返りながら撮っていたら……突然、α7IIIの電源が切れました。
やっぱりダメだったかー、とバッテリーを交換してみてもダメ。カメラエラーです、という非常な文字が。
温まったら治るかな、とトップローダーに仕舞ってしばらく歩いてみましたが、ダメでした。
その後帰宅しても変化はなく。シャッター周りが怪しいですが、とりあえず修理に出して結果を待とうと思います。

α7IIIの厳冬期テストも兼ねた今回の登山、結果としては……黄信号?
今回の山行での撮影枚数は約250枚、最後の一枚を撮ったタイミングでもバッテリーは85%くらい残っていたので、恐らくバッテリー自体は保つはず。でもメカの部分は寒さに耐えられるのかどうか、ちょっとわからないですね。
修理から戻ってきたら追記しようと思います。

というわけでここからは写真なし。
ルート的にもここから先はただのピストンなので、特に変わったことはないのですが。
その後は危なげなくテン場まで戻って、のんびり撤収して渋の湯へと帰りました。

強いて書くとしたら、テントの撤収は割とのんびりでしたが、さっさと下山してしまったので渋の湯で結構待ったことくらい?(笑
電波もあまり入らないところなので、黒百合ヒュッテでうまく時間を潰した方がいいかもしれませんね。

厳冬期登山反省会

そんなこんなで初の厳冬期テント泊登山。
危ない橋は渡らなかったかなと思いますが、それでも危険な山であることには変わりはありません。
事前の天候情報のおかげで、ほとんどベストと言えるタイミングを選択できたこと。
躊躇わずに厳冬期用の装備を揃えたこと。
ピッケルやアイゼンの使い方など、動画サイトで色々勉強することもできますね。

技術も知識もまだまだな私ですが、リスク回避のことは常に考えながら、これからも安全登山を心掛けたいと思います。
来年も良き登山ライフを楽しめることを祈りつつ。
あ、もちろん音楽もやりますよ。やる気はあります。あるんです。

それでは今回の登山で感じたことを箇条書きで。

  • 厳冬期装備は大事
  • 逆に、厳冬期に耐えられない装備はダメ(OD缶は250の方がいい)
  • 血行は大事(サイズの合わないインナーソックスは逆に足を冷やす)
  • スノーショベルもあった方がいいかも(あるとだいぶ設営が楽になる+場所選びの選択肢が広がる)
  • 厳冬期レンズ交換チャレンジはダメ……かもしれない?
  • 荷物は……正直、もうちょっと軽くしたい

締めの一言

ギリギリ2019年のうちに2019年の日記を書き終えました。えらいぞ私。
今年は天候や天災の影響で、計画通りには山を歩けませんでしたが、振り返ってみれば山行日数31日。
なんだかんだで充実した一年だったと思います。

DTMの方も公開した曲が8曲。こっちも充実してますね。
その分他の何かが犠牲になっていることからは全力で目を背けようと思います。
来年もそんな感じで、ごく一部に偏って充実した一年を送りたいですね!
それでは、良い年を。

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